台所の床下には今もヘドロが残り、風呂場の柱は腐食が進む一方だ。東日本大震災から10年が過ぎても、復興は程遠い。
4月下旬、在宅被災者の支援を続ける宮城県石巻市の一般社団法人「チーム王冠」の伊藤健哉代表(54)が、同市貞山地区の佐藤悦一郎さん(76)宅を訪ねた。
「行政に苦しめられ、生活はひどくなるばかり」。佐藤さんの嘆きに、伊藤さんは深くうなずいた。
佐藤さんの自宅は津波で「大規模半壊」と判定された。国の被災者生活再建支援金や貯金など計300万円では全ては修繕し切れなかった。震災でたんすの下敷きになった両膝が痛むなど不調が重なり、病院通いが続く。2カ月で約15万円の年金はほとんど手元に残らない。
チーム王冠の支援で生活保護を受けられるようになったが、介護保険料が数百円減った結果、基準を満たさなくなったとして昨年11月に保護が打ち切られた。伊藤さんは「助けられて当然の被災弱者が、行政の理屈で切り捨てられている」と批判する。
震災直後、食料支援に奔走した伊藤さんは、「自宅があるから」と避難所を追い出され、壊れた家に暮らす在宅被災者の存在を知った。チーム王冠を結成し、修繕費を用意できないなど法制度の隙間にいる人々を調べ、支援制度の利用状況や生活の課題をまとめた「カルテ」を約6500世帯分作成した。
今も約120の困窮世帯を頻繁にフォローする。弁護士らと「災害ケースマネジメント」と呼ばれる伴走型支援を続ける中、災害法制の不備だけでなく「つなぎ先」となる福祉制度の不十分さを痛感した。
書類の読み書きが難しかったり、精神疾患を抱えていたり。複雑な事情が考慮されず、被災者が必要とする支援が届かない現実を目の当たりにした。
「災害対応は危機管理部門の仕事であり、福祉の担当ではないという意識を感じる」。伊藤さんが全国の支援団体などと共に災害ケースマネジメントの普及や制度化を目指す「構想会議」でも、福祉との連携が課題に挙がっている。
災害と福祉を結び付ける動きもある。鳥取県は4月1日、「災害福祉支援センター」を県社会福祉協議会内に設置した。
2016年10月に最大震度6弱を観測した鳥取中部地震の被災地で、県は災害ケースマネジメントを実践した。18年3月に県防災危機管理基本条例を改正して制度化。センターは市町村に理解を広げて体制整備を図る役目を担う。
県福祉保健部と共同でセンターを所管する県危機管理局の西尾浩一局長(58)は、伊藤さんらがつくる構想会議のメンバーでもある。
「災害ケースマネジメントの充実には福祉の視点からのアプローチが必要。支援の手法が浸透すれば、平時の地域福祉の機能向上にもつながる」と西尾さんは期待する。
戸別訪問を通じ、被災者一人一人に向き合い解決策を探る伴走型支援。「一見すると遠回りだが、復興の最適解であり、最短ルートになる」と伊藤さんは力を込める。次の災害に備え、実践者たちの模索が続く。
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