<まちかどエッセー・小田中しおり>靴とフランス

小田中しおり[おだなか・しおり]さん 作業療法士。1963年仙台市生まれ。旧国立仙台病院付属リハビリテーション学院卒。98年国家資格取得。生活介護施設、障害児等療育支援事業所、特別支援学校で身体・発達障害児者を支援している。仙台市青葉区在住。

 街を歩いていると職業柄ついつい靴を観察してしまいます。たまに履きつぶして変形した靴を履いている人を見掛けると、いずれは足にトラブルが出てくるのではないかと勝手に心配しています。
 日本に住む私たちは外出時に靴を履き、家でははだしかスリッパを履いて足をリラックスさせています。そのためなのか、ぴったり合った靴よりもやや大きめのサイズを選んだり、何年も履き続けて幅が広がった靴を違和感なく履いたりする人が多いように感じます。
 以前住んでいたフランスで印象的な出来事がありました。10カ月の娘をベビーカーに乗せて公園を散歩していた時のこと。上品なご婦人が近づいてきて、娘の靴を指さしながら説教を始めたのです。歩き始めの子にこんな大きくて重くて硬い靴を履かせてはいけないと目を丸くして言うのです。娘はまだ歩けないし、寒そうだったから大きめだけど靴を履かせていると反論しようにも語学力がなく、あっけにとられて立ちすくんでいました。「歩き始めの子どもの靴は特に気をつけないとね」と駄目押しされた私は「メルシー、マダム」とお礼を言いながら、逃げるように公園を後にしたのでした。
 日頃からフランス人の靴へのこだわりは感じてはいたのですが、改めて意識の高さに気づかされました。素敵(すてき)な靴屋さんがとても多いし、若い人たちは服装はラフだけど、革靴はいつもピカピカでおしゃれに決めています。コインランドリーの洗濯乾燥機の中でスニーカーがくるくる回っているのを見たときはそこまで徹底的にきれいにするのかとびっくりしましたが。このフランスでの体験が靴を意識する大切さを知るきっかけとなったのでした。
 最近、障害の方の靴選びに同行することが増えています。年齢を重ねていくと足のトラブルがいろいろ出てきます。外反母趾( ぼ し)、うおのめ、たこや陥入爪などを治療しても靴が変わらないと再発してしまうので、ぴったり合った靴を履くことが必要です。関節が軟らかいダウン症などの人も、小さいときからこまめに足のサイズを確認して靴を選ぶと変形予防になります。足は全体重を支える基礎の部分。シューフィッターのいるお店で相談するなどして、靴は慎重に選ぶことをお勧めします。
(作業療法士)

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まちかどエッセー

 仙台・宮城在住の執筆者が、それぞれの活動や暮らしで感じたことをつづります。


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