<せんだい進行形>ワーケーション需要、松島に取り込め 宿泊施設やリモート環境整備

客室を改修して整備したミーティングルーム=松島プチホテルびすとろアバロン

 観光地で休暇を取りながら働く「ワーケーション」の需要を取り込もうと、日本三景松島で知られる宮城県松島町の官民が動きだしている。昨年の観光客数は新型コロナウイルスの影響で大きく落ち込み、統計の残る1989年以降で過去最低となった。宿泊施設は新たな客層の掘り起こしに期待をかける。
(塩釜支局・高橋公彦)

 松島町の松島プチホテルびすとろアバロン(定員30人)は4月中旬、リモートワーカー向け宿泊プランの販売を始めた。専用のWi-Fiを導入し、客室やラウンジを宿泊者用の仕事場に改修。日帰り客にはレストランなどをコワーキングスペースとして提供する。

 「松島は大都市の仙台市に近い上、海や自然、歴史がそろい、ワーケーションの潜在能力が高い」。同館の新田一修社長の期待は大きい。

 従来のラウンジの一部に、リモートワーク用の個室2部屋(各約2平方メートル)を整備。机と椅子、インターネット接続用のケーブルも備える。客室一つはオンライン会議に対応した最大4人が使えるミーティングルーム(約15平方メートル)に改修した。コインランドリーとミニキッチンも設けた。

 宿泊者に朝晩の食事を提供しているレストランとウッドデッキは、コワーキングスペースに活用する。仕事以外のバケーション需要も考え、バーベキューができるかまど2基も造った。

 リモートワーカー向け宿泊プランは素泊まりで1人1泊7000円から。リモートワーク用の個室とミーティングルームの利用料が含まれ、チェックインは午後3時からだが、午前11時から両施設を使える。

 今月にオープンしたコワーキングスペース(平日午前11時~午後4時)は1時間500円から。オプションでリモートワーク用の個室とミーティングルームを利用できる。両施設の利用料込みで個人5000円、法人2万5000円(10人まで登録可)の月額料金も用意した。

 同館は創業40年。12室と小規模ながら食事や貸し切り風呂に力を入れて差別化を図ってきたが、2021年5月期決算の売上高はコロナ禍で前期比3割以上の減少が見込まれるという。

 リモートワーカー向け宿泊プランは既に計約10人が利用した。新田社長は「リモートワークの流れはコロナ収束後も続く。宿泊者らの意見や反応を踏まえて改善を重ね、ピンチの中でも前向きに事業を展開していく」と力を込める。

支援金交付、町も本腰

 松島町は本年度、JR仙石線松島海岸駅に近い石田沢防災センターをリモートワーク向けの施設として整備し、住民や観光客に有償で貸し出しを始める。町内の宿泊施設には、ワーケーションの導入費用に対する支援金も交付する。事業費は計500万円で、ともに新型コロナウイルスに対応した国の地方創生臨時交付金と一般財源を活用した。

 リモートワーク施設として活用するのは、防災センター棟の3分の1の面積に当たる約100平方メートルを想定。定員は20人程度で、Wi-Fiを導入し、既存のテーブルをパーティション(仕切り板)で区切るほか、個室型のブースも用意する。

 会議室は少人数のオンライン会議ができるよう、大型モニターやマイクスピーカー、カメラを整備する。居住地を問わず有償で時間貸しする方針で、オープンは7月中を目指す。

 宿泊施設への支援金は1施設当たり50万円を上限に8施設分の予算を確保した。通信環境の構築や、施設内に新たにスペースを確保する場合の設備改修費などに使える。受け付けは6月1日に開始する。

 町内の宿泊施設では、客室をワーキングスペースに改修したり、ロビーやホールにブースを設けたりする動きがある。従来のチェックイン、チェックアウト時間にこだわらないプランも検討されている。

 町の佐々木敏正企画調整課長は「家族旅行でも父親は仕事をして、母親や子どもは観光というケースも考えられる。観光地としての特色を生かした施策を展開し、松島を盛り上げる起爆剤にしたい」と意気込む。

リモートワーク向けのスペースとして整備される石田沢防災センターの防災センター棟
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