コロナ変異株「怖さを強調するのは過剰対応」 専門家に聞く

西村秀一氏(左) 児玉栄一氏(右)

 新型コロナウイルスは現在、感染力が強いとされる変異株に置き換わり、警戒感が続く。一方で高齢者のワクチン接種が東北でも本格化する。2人の専門家に変異株や接種後の留意点を聞いた。
(聞き手は報道部・佐藤素子)

制限緩和で再拡大のリスク高まる

■東北大災害科学国際研究所教授・児玉栄一氏

 新型コロナウイルスは流行が従来株から変異株に置き換わっているが、現時点でさほど心配ない。変異株の感染力は従来株と比べ、高く見積もっても2倍だ。

 3密をなくし、人混みには出ず、手洗いとマスクを欠かさないという従来の予防策に加え、高いレベルの行動制限をすれば感染力が2倍でも十分防げる。宮城県も新規感染の9割が変異株でも流行を抑え、感染者数は減った。

 英国株やインド株の怖さをことさら強調するのは過剰対応だが、社会全体を引き締めるためには必要かもしれない。ウイルスは今後の変異次第で一気に感染者が増える可能性もあり、注意は必要だ。

 感染者数が完全に下がりきる前に制限を緩めてしまうと、急カーブで再び増えてしまう。仙台市は2月にまだ10人ほど感染が出ている段階で緩んでしまい、「第4波」の大きな山になった。感染ゼロに近づけるほど感染拡大のカーブも緩やかになり、早期に対策を取りやすい。

 ウイルスは、たまたま近くにいる宿主に寄生して増殖する。若い人がいいとか、えり好みはしない。若者のクラスター(感染者集団)や町飲みは目立つが、若いと感染しやすいかは確たる証拠がない。

 高齢者のワクチン接種が始まった。「今まで我慢してきたから」と解放されたい気持ちは分かるが、接種後もこれまでと同じ感染対策を続けてほしい。コロナのワクチンはインフルエンザのワクチンより効果が高いが、免疫力が落ちた高齢者は効果が少し下がるとみられるからだ。

 コロナ前の生活スタイルに戻るには、国民の6~8割が接種すれば可能かもしれないが、実現には時間がかかる。米国の接種率は現在4割。宮城県内は順調にいけば年内に5割を超えると期待している。

ワクチン、高齢者以外にも拡大を

■仙台医療センターウイルスセンター長・西村秀一氏

 新型コロナウイルスの変異株に関するさまざまな研究報告が出ているが、感染力の強さ、重症化などの数値には幅がある。

 変異株は感染力が強いと報じられるが、全国的に感染者は減っている。宮城県や仙台市も状況はかなりよくなっている。変異株に置き換わっても深刻な事態は生じていない。

 変異株をやみくもに恐れる必要はない。インド株は日本でどんな広がり方をするかは未知数だが、油断しないことが大切だ。

 問題は医療の逼迫(ひっぱく)だ。コロナでいったん入院すると症状が治まるまで居ざるを得ず、退院まで日数がかかる。入院者数が減らないのは、退院者数が増えないからだ。大阪の医療逼迫は病床不足が問題なのであり、必ずしも変異株のせいではない。

 恐怖をことさら強調するのは、行動制限のための「錦の御旗」にしているとしか思えない。

 宮城はこれまで県の調整本部を介した協力病院への入院調整がうまくいっている。ただ、医療施設の脆弱(ぜいじゃく)な地域での感染が突然急拡大することもあるので、楽観は禁物だ。

 宮城の死亡率は全国最低レベルで、この点はもっと評価されていい。行政は怖さを強調してばかりだが、ポジティブに捉えて対策を続けてほしい。

 高齢者は感染拡大の被害者であり、拡大させるのはもっと若い人たちだ。高齢者のワクチン接種を加速させ、高齢者以外にも行き渡らせる。さらに若い人たちへの接種拡大が今後のポイントになる。

 ワクチン接種で重症化は避けられるようだが、感染自体のリスクはなお残る。接種が済んだからといって勝手な振る舞いをすると、感染者が再び増える可能性があることを、肝に銘じておく必要がある。

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