庄内柿がクマを呼ぶ? 放任果樹の伐採促す声

民家周辺で未収穫の柿の実を食べるクマ=2020年12月、鶴岡市(三瀬地区自治会提供)

 春から秋にかけて人里に出没するクマによる人身被害が深刻化する中、実を付けたまま放置された果樹が原因の一つだとして、全国有数の柿生産地の山形県庄内地方で手入れ不足の柿の木の伐採促進を求める声が上がっている。全国には伐採補助金を新設し、被害を減らした自治体もある。庄内柿は近年、収穫放棄が増えており、先進例を参考に模索が続く。

  県内では昨年、クマの目撃が795件と過去最多。人身被害5件、捕獲数615頭も過去最多レベルで、市街地への出没が目立つ特異な傾向を示した。庄内では民家などの柿の木周辺で出没が相次ぎ、未収穫の実がクマを引き寄せているとの見方が強まった。

 住宅街で人身被害も出た鶴岡市の担当者は「高齢化が進み、市街地周縁の畑や民家に放置される柿が増えている。伐採を促す仕組みが必要だ」と強調する。

 北陸地方では、放置(放任)状態の果樹がクマを招き寄せる原因との共通理解が出来上がっている。石川県加賀市で昨年10月、クマが商業施設に約13時間立てこもり大騒ぎになった際、残されたふんの内容物は8割程度が柿の果肉や種だった。柿を食べながら移動したと推測されるという。

 石川県立大の大井徹教授(動物生態学)は「冬眠前に山中のブナの実やドングリが不足すると、クマは行動圏を広げる。柿やクリ、クルミを求めて市街地に迷い込み、居残らないように、『放任果樹』は撤去しておくべきだ」と指摘する。

 富山県は昨年度、クマ対策として所有者が自力で伐採できない柿やクリの木を自治会などが撤去する際の補助金を新設した。放任果樹の撤去には、農作物被害を防ぐ名目なら国の鳥獣被害防止総合対策交付金が使えるが、人身被害防止が目的のため県が独自に予算化した。県内のクマによる昨年の人身被害は6人と、前年の20人から激減した。

 「庄内柿」で知られる山形県庄内地方は、県全体の柿の栽培面積の9割が集中する一大産地。ただ、1970年代に全国一だった同県の栽培面積は2020年にピーク時の3割にまで激減した。販売を諦めた結果、木を放置する農家も少なくない。

 旧庄内藩エリアで柿は明治維新後、農地開墾に加わった旧藩士らが栽培技術を磨き、販路を広げた特別な果実。庭木としても広く好まれてきた。

 山形県みどり自然課の担当者は「放任果樹の撤去に向けてどう予算を確保できるのか、他県の事例も踏まえて検討したい」と話す。

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