<仙台いやすこ歩き>(141)チロルのピザ/半世紀余 元気出る食感

 いつも速足。今日ばかりはゆっくり行こうと街並みを眺めたとたん、あれ~!と見えたのだ。ずっと頭の中で探していた店が、こんなにも近くに。早速電話すると、画伯も驚きつつ「初めてピザを食べたのはその店。小学生の時」。私は学生時代だが、初ピザで一致だ(笑)。

 待ち合わせた2人は、ハピナ名掛丁(青葉区)のビルをトントントンと地階へ下り、ドアの前に立つ。懐かしいマークと懐かしい名前。「イタリアンレストラン チロル」は、外からのぞく店内の様子もかつての印象のまんまである。

 迎えてくれたのは店舗運営担当の河野(こうの)京子さん(49)で、ピザ作りを見たいと話すとすぐにOKサイン。厨房では、まず冷蔵庫で寝かせていた生地が取り出される。「毎朝作っていて、常温で2回発酵させます」。丸まった1人分150グラムの生地を太い麺棒で延ばし、均一な厚さになるよう指先で確認しながら、皿にしっかり密着。その上に朝に仕込んだ手作りのピザソースを敷き、サラミ、マッシュルーム、ピーマン、玉ネギ、オリーブの実をのせ、さらにたっぷりのチーズをのせてオーブンへ。「ミックスピザは一番上がチーズ。シーフードピザでは具材をチーズの上にのせて見えるようにします」

 作りながら、優しい声で解説してくれたのは取締役の大川原昌平さん(44)。経営者の長男で、河野さんの弟さんだという。レシピのように淡々と書いてしまったが、一つ一つの工程が丁寧で、指の先の先まで美しい。大切に作られていることが分かり、期待はさらに高まる。

 じゃーーん。ついに、運ばれてきたミックスとシチリアのピザ2皿。2人が同時に口に運んだのは、もちろん、初ピザで食べたミックスだ。ハフハフの後の沈黙後、「あぁ、これっ」とひと言。思わず心の中で「帰ってきました」と、話しかけてしまうほど。

 思い出ピザを堪能した後、河野さんと大川原さんから話を伺う。創業は全国チェーン的なお店で、独立したのが1970(昭和45)年。チロルというお店は全国に45店ほどあったらしい。独立した最初の店舗は藤崎(青葉区)の中で、その後、店舗展開し、2年前に人材不足で泉店を閉めてからはここだけとなる。味と作り方は創業時のまま。「オリジナルソースやチーズの配合も変わりません」と大川原さんがいうと、河野さんも「ロゴマークもです」とにっこり。

 お2人のお父さんがスタートさせてから、半世紀余。コロナ前までは毎日お父さんも店に顔を出していたそう。「父は話が大好きで、お客さんとのおしゃべりを楽しんでいました」。実は、今日はお休みだが、もう一人の姉もここで働いていて、姉弟3人とも子どもの頃から店に食べにきていたという。従業員も家族付き合いで、「現在のコック長も兄のような存在です」と大川原さん。話を聞いているうちに、テレビで見るイタリアのリストランテの情景と重なって、うれしくなる。

 もう一皿のシチリアもガツンと元気の出る味。梅雨も暑い夏も、ここのピザがあれば大丈夫。そうだ、時々帰ってこよう。

おぼえがき/パスタの一種 ナポリ発祥

 ピザはパスタの一種である。英語圏でピザパイと言われることがあるが、イタリア語では元々ピザがパイの意味なので、ピザパイでは重複表現になる。イタリア料理の基本食材はガーリック、オリーブ、トマト、パスタだが、ほとんどのピザにはこれらが入っているし、ピッツァイオーロと呼ばれるピザ職人がいるほどで、ピザはイタリアで最も国民的な食べ物の一つといえる。

 発祥の地はナポリ。現在は、大きく分けると、ナポリ風とローマ風があり、もっちりとした縁が特徴の丸形がナポリ風で、これに対してカリッとした食感で長方形を基本とするのが、ローマ風である。

 さまざまな種類の中で、日本で人気のマルゲリータは、イタリア統一後の1889年、初めてナポリを訪れたイタリアの王妃マルゲリータに献上されたピザ。トマトソースの赤、モッツァレラの白、バジルの緑が、イタリアの三色旗を表している。

 チロルは現在ランチのみの営業となっている。

 土地には、その土地ならではの食があります。自他共に認める「いやすこ(仙台弁で食いしん坊のこと)」コンビ、仙台市在住のコピーライター(愛称「みい」)とイラストレーター(愛称「画伯」)が、仙台の食を求めて東へ、西へ。歩いて出合ったおいしい話をお届けします。

河北新報のメルマガ登録はこちら
仙台いやすこ歩き

土地にはその土地ならではの食があります。自他共に認める「いやすこ(仙台弁で食いしん坊のこと)」コンビ、仙台市在住のコピーライター・みうらうみさんとイラストレーター・本郷けい子さんが仙台の食を求めて東へ、西へ。歩いて出合ったおいしい話をお届けします。


企画特集

先頭に戻る