<まちかどエッセー・小田中しおり>フラに助けられたこと

小田中しおり[おだなか・しおり]さん 作業療法士。1963年仙台市生まれ。旧国立仙台病院付属リハビリテーション学院卒。98年国家資格取得。生活介護施設、障害児等療育支援事業所、特別支援学校で身体・発達障害児者を支援している。仙台市青葉区在住。

 もしも神様から20代前半に戻してあげるよと言われたら、お気持ちに感謝しつつも丁重にお断りするでしょう。あの頃はあてもなく砂漠を歩いているような日々でした。つかんでも指の間から砂が流れ落ち、踏ん張っても砂に足をとられてしまう感覚。次々と身内や友人の不幸が続き、苦楽を共にした職場の親友や弟までも見送り、否が応でも死を意識せざるを得なかったのです。
 そんな時、癒やしに訪れたハワイでフラダンスに出合いました。疲れてホテルの部屋で休んでいた両親をおいて、私はプールサイドへ下りて行きました。ディナーにはまだ少し早い時間で、ビーチチェアに座っていたのは私一人。ぼんやりとワイキキビーチを眺めていました。アロハ・オエの音楽が静かに流れています。するとプールの向こう側に鮮やかなムームーを着たフラダンサーが一人ゆっくりと踊り始めました。その背後にはオレンジ色に輝く夕日が少しずつ沈んでいきます。ビーチを渡るそよ風とダンサーが一体となり、まるで私に優しく語り掛けるようです。この世のものとは思えない光景でした。この時、今までのくすんでいた風景が本来の色を取り戻し輝き出したのを感じました。理不尽さや無力感に縛られていた心が次第に解放されていったのです。
 時がたち今から2年半前、知的障害児・者の相談で余暇活動が話題になることが何件か続きました。土・日曜が暇なのでサークルを探してほしいという要望でした。フットサルやヒップホップのサークルはあるけれど、運動が苦手な相談者さんは乗り気でありません。そんな時、フラ講師のママ友から地域でサークルを作りたいので手伝ってほしいと連絡が来たのです。
 障害のある方や子ども、その保護者向けのフラサークルを立ち上げました。青葉区の中山市民センターで第2日曜日にレッスンをしています。フラの手の動きは手話にとても似ています。障害の子どもにも分かりやすくて覚えやすい。手の動きで思いが伝わるすてきな踊りです。
 若い時に元気をもらったフラにまた助けてもらいました。私自身もフラを踊る機会を得て不思議な縁を感じます。メンバーにもフラを通してより充実した人生を送ってほしいと願っています。
(作業療法士)

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まちかどエッセー

 仙台・宮城在住の執筆者が、それぞれの活動や暮らしで感じたことをつづります。

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