社説(6/10):飲食店の感染対策/自助努力報われる仕組みを

 消毒液や検温器、アクリル板は、今や飲食店に必須の備品だ。二酸化炭素濃度を検知し、換気を自動制御する空調設備を導入した店もある。
 新型コロナウイルスがまん延する中、飲食店は「感染の急所」と目されてきた。業界団体や行政が策定したガイドラインの順守を求められ、独自に感染防止を強化している店も多い。一概にリスクが高いと見なすのは適切ではない。
 だが、ひとたび新規感染者が急増し、医療供給体制が逼迫(ひっぱく)すれば、当該地域の店は一斉に休業や時短営業の対象となる。感染者がゼロでも免除されない。「営業の自由」を制限された上に、個々の努力が考慮されない。不合理な状態が続いている。
 個々の取り組みを評価する仕組みがあれば、苦境にあえぐ飲食店の救いとなろう。政府と自治体は厳しい対策を迫るのなら、自助努力が報われる方策も用意し、充実させるべきだ。
 その一つが対策を徹底する店を認証する制度だが、立ち上がりが遅く、後手に回ったひずみが表面化している。東北各県でも導入が進み、宮城県は今月初め、ようやく認証マークの交付を始めた。
 入店や客席の利用方法、換気設備など計36項目の基準をクリアすれば、県がお墨付きを与える。認証の取得に要した備品や設備の購入費は、10万円を上限に補助する。認証店に使用を限定した2割増しの食事券を県が販売し、利用を促す。
 この種の制度は、山梨県が昨年6月に始めた「グリーン・ゾーン認証制度」が先駆けだ。1メートル以上の座席間隔の確保など明確な基準を設け、「山梨モデル」と呼ばれる。
 ただ、政府が推奨し、全国に同様の制度導入を呼び掛けたのは、コロナ禍2年目の4月末になってからだ。
 宮城県の認証店に対する補助は、5月8日以降に購入した分に限られる。多くの飲食店は1年以上前に業界団体が作成したガイドラインに基づき、既に対策を講じている。早々に手を打った店が対象外では不公平だ。
 山梨県は認証制度のほかにも独自の試みを打ち出し、成果を上げている。
 全国に緊急事態宣言が発令された昨年春、同県内の飲食店なども知事の要請に基づき休業した。ただし、県の感染防止基準を順守した店は、県の判断で休業要請が解除された。感染拡大を防ぎながら、営業を可能にする仕組みだ。
 同県は首都圏と直結し交流が盛んだが、陽性者数は比較的低く抑えられてきた。自助努力を認めることが事業者の意欲を引き出し、おのずと感染防止への責任感を強める契機になったとみられる。
 飲食業界は瀬戸際に立たされている。徒労感を払拭(ふっしょく)し、事業継続につなげる支援の仕組みが急務だ。時宜にかなわなければ、元も子もない。

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