社説(6/12):仙台・時短営業解除/感染防止 基本に立ち戻ろう

 新型コロナウイルス感染防止策として、仙台市青葉区の酒類提供店などに要請されていた時短営業があす13日、解除される。

 宮城県全域で飲食店が通常営業に戻れるのは実に2カ月半ぶりだが、コロナ禍前の日常を取り戻せるわけではない。感染の沈静化は時短営業の効果もあろうが、市民生活全般で感染防止の基本を守り続けてきたことが大きい。

 気を緩めれば、元のもくあみだ。宮城県の感染状況が落ち着いたとはいえ、楽観できない理由が多々あるからだ。

 第一に健康を担保するワクチンが普及していないこと。65歳以上の高齢者への優先接種が全国で進むが、宮城県で1回目の接種を終えた割合は20%を超えたにすぎない。

 コロナに対抗する決め手が、ごく一部にしか行き渡っていない。飲食店の営業時間が延びれば、人の流れは間違いなく盛んになる。ましてや初夏の陽気になり、夏の行楽シーズンが迫る。安全弁が心もとない時に感染がぶり返せば、再び流行の大きな波を招く恐れがある。

 新規感染者数が大きく減少し、確保病床の使用率をはじめ、感染状況の指標が軒並みステージ3(感染急増)を下回った。とはいえ、指標を数日で悪化させかねない波乱要因がある。従来株より感染力が強く、重症化リスクも高いとされる変異株の動向だ。

 宮城県内では「N501Y」変異株の陽性率が4月下旬に急上昇し、5月中旬には9割を突破した。

 ウイルスは増殖を繰り返す中で少しずつ変異する。インドで検出された「L452R」変異株は感染力がさらに強く、ワクチンの効果を弱める可能性が指摘されている。

 東京、大阪など4府県に出された緊急事態宣言の期限が2度も延長されたのは、早々に変異株に置き換わったことが要因に挙げられている。

 インド株は新たに国の監視対象に加わり、宮城県は今月、検査を始めたばかりだ。検出件数が増加している首都圏などとの往来により、変異株が地方に拡散するリスクは否定できない。

 飲食店も手放しで歓迎できまい。飲食の自粛ムードが続いており、客足が早々に戻ることは考えられない。

 コロナ禍で飲食業界は疲弊し、食材や酒類飲料の納入業者も売り上げが激減している。期限前に多くの店が通常営業に戻したのは、背に腹は代えられないとの切実な思いからだろう。

 時短営業は青葉区でのみ延長された。飲食店が集積する地区は他の区にもあり、整合性が問題になった。個別の感染対策を考慮せず、営業の自由を一律に縛ることの妥当性も問われている。

 通常営業の再開がなし崩しになれば、引き締め効果は薄れよう。再来が懸念される感染の波に備え、課題を検証し、施策を充実すべきだ。

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