「あの日から」第13部 芽吹き(2) 東京・吉田慶さん 店拡大 東北を日本一に

オープンに向け準備中の店内で抱負を語る吉田さん=4日、仙台空港

 メニューに東北各県の地酒やワイン、6県の食材を使ったパスタが並ぶ。仙台空港ターミナルビル(名取市)の飲食店「TREGION GALLEY(トレジオン ギャレー)」。新型コロナウイルス禍の中、10日にオープンにこぎ着けた。

 「Tregion」(東京)社長の吉田慶さん(37)=東京都杉並区=は、仙台空港を含め東京、宮城、岩手で7店舗を運営する。「東北を初めて訪れた人にも地元の人にも楽しんでもらいたい」と意気込む。

 港区赤坂にある2店舗は、新型コロナの影響や新店舗の開業準備のため休業中。盛岡市内の3店舗と仙台市のエスパル仙台店も売り上げの減少が続くが、ひるまず出店攻勢をかける。

 生まれも育ちも東京。それでも「東北を日本で一番魅力的な地域にする。店は一人でもファンを増やす場」との強い信念がある。

 20歳の時、父の背中を追って医師を目指そうと、当時通っていた大学を中退した。だが、受験勉強に身が入らない。「ただただ、ふらふらしていた」

 そんな状況で東日本大震災の日を迎えた。東北に足を運んだことはなかったが、「自分も社会の役に立ちたい」と2011年4月上旬、独りで遠野市に向かった。NPO法人「遠野まごころネット」が岩手県外からのボランティアを受け入れていた。

 側溝の泥出し、断水地域での水くみ、避難所の掃除、水産加工場の冷蔵庫の片付けなど何でもやった。1日数百人のボランティアの世話役も買って出た。翌5月、NPO法人の職員として働きだした。

 震災から1年がたち、支援団体は活動継続が難しくなった。被災地を離れる団体も出始めた。活動資金がネックとなった。

 「寄付金や助成金に頼ると、どうしても続かない。関わりを継続するにはビジネスで応援するしかない」

 復興に向け、東北以外の地域で東北のファンを増やす必要を感じていた。東京で東北の海の幸・山の幸を提供する飲食店の開業を思い立った。飲食業の経験はゼロ。料理もしない。NPO法人を退職し、手探りで13年11月、港区赤坂に1号店「東北バル トレジオン」を開いた。

 店名はスペイン語の「3(トゥレス)」と「地域(レジオン)」を合わせた造語で、「三陸」を表す。2年近くたつと徐々に常連も増えた。仲間に囲まれるのも楽しかった。

 ただ、疑問が湧いた。生産者や事業者との取引額は、月に数千円から数万円にとどまる。「これで本当に支援になっているのか」

 現地の状況をより詳しく知らねばならないと考えた。「東京にいながら地域に根差した活動はできないか」。出した答えが、ボランティア活動で縁ができた盛岡市への進出だった。店舗数が増えればより大きな取引もできる。拡大路線に経営のかじを切った。

 「10年前に東北に行ったからこそ救われた。地域や暮らす人々への恩返し」とはにかむ。

 「東北は食材も人も魅力の宝庫。伝え方次第で盛り上げることができる」。東北各県に店舗を広げようと、ひたすら突き進む。
(山形聡子)

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