水道みやぎ方式「魅力もリスクも」 選外企業の幹部が公募過程総括

宮城県庁

 上下水道と工業用水の運営権を一括して民間に売却する宮城県の「みやぎ型管理運営方式」を巡り、運営事業体の公募で選外となったグループの代表企業「JFEエンジニアリング」(東京)の担当幹部が河北新報社の取材に応じた。上・工・下水3分野の9事業を20年間受託できるみやぎ型の特性を「企業にとっては魅力もリスクもある。それだけに関係機関の連携を重視して提案した」と選考過程を振り返った。

 同社は2017年、浜松市が国内で初めて運営権売却(コンセッション)を導入した下水道事業に参画。水メジャー仏ヴェオリア傘下のヴェオリア・ジェネッツなどと組んで37年度末までの20年間、維持管理を担う。
 「『(浜松の)次は宮城県』とアンテナを張っていた」と幹部は言う。「3分野を総合的に長期でデザインできる。与えられた条件でいかに利益を捻出できるか、民間の手腕が求められている」。みやぎ型を野心的な挑戦と受け止めた。
 浜松との違いについては「下水だけでなく、上水も長期で担う点だ」と強調。「下水も防災など重要分野に直結するが、飲料は人体に関わる。圧倒的に(意識が)違う」と話す。
 JFEグループは8社で構成。約20年前から県内で浄水場の管理などに当たる「ウォーターエージェンシー」、「水ingAM」が入った。両社と関係が近い三菱商事がグループ編成の軸になったという。
 幹部は「上下水道の維持管理を手掛ける国内トップ2が恐らく初めてタッグを組んだ」と言及。「地元住民と共に東日本大震災を乗り越えた。設備も熟知しており、経験への自負、思いはあった」と回顧した。
 同社グループは県側に示した収支計画で、圏域や用途が異なる対象9事業のうち、一部の流域下水道で損失を計上した。9事業の合算では黒字だったが、県の検討委員会は健全運営に懸念が残るとして「失格」と判定した。
 幹部は「まだ分析、整理ができておらず、現時点では残念としか言えない。水道の未来を担う事業の成功を願うだけだ」と語った。
 要求水準の実現可能性を探り合う「競争的対話」も論点の一つだった。幹部は「官と民が互いのリスクを確認し合うのは当然」と指摘。「企業にも社員、株主がいる。『民間に寄りすぎている』との批判はどうか」と反論した。
 競争的対話を通じ、県側は企業の知的財産権の使用許可料を支払う方針に転じ、反対派は「企業の言いなり」と訴える。幹部は同社グループの提案で変更されたと明かし、「必要な項目。事業者になれなかったが、制度設計に一役買えた」と評価した。
 日本の水道事業の今後を「人口減、施設の老朽化、節水社会の進展、災害多発の四つの課題に直面し、小規模の事業体は長期民間委託か、広域化に動くのでは」と予測。みやぎ型に関する一連の議論を「『水はただではない。このままでは私の家の水道管もどうなるか分からない』という現実への認識を深める契機になったのは大きい」と総括した。

 河北新報社は、みやぎ型に応募した他の2グループの代表を務めたメタウォーター、前田建設工業にも取材を申し込んだが、「現時点では応じられない」などと回答した。

[メモ]人口減少に伴う水道料金収入の漸減、管路など施設の老朽化を踏まえ、県企業局は2017年、みやぎ型管理運営方式の導入に向けた検討を開始。有識者でつくる県検討委員会は21年3月、メタウォーターや地元企業などで構成する10社のグループを優先交渉権者に選定。県企業局は同グループに運営権を与える議案を15日開会の県議会6月定例会に提出する。事業開始は22年4月を目指す。

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