社説(6/13):雲仙・普賢岳噴火30年/教訓を生かし火山に備えを

 長崎県の雲仙・普賢岳で1991年6月3日、消防団員や警察官、報道関係者ら43人が犠牲になった大火砕流の発生から30年がたった。

 火砕流は高温の火山灰、軽石などが高温のガスと混ざり、山の斜面を高速で滑り落ちる。噴煙の温度は数百度に及び、6月3日の大火砕流では住宅147棟が焼けた。

 地震や津波、風水害であれば、発生後間もなく、復旧へと局面が変わる。だが、普賢岳は違った。なかなか災害発生の終わりが見えなかった。

 噴火は大火砕流の約半年前、90年11月に始まった。火山活動の終息宣言が出たのは96年5月。この間、火砕流は約9400回に上った。

 火砕流の印象が強いが、土石流の被害も甚大だった。発生は約140回を数え、大雨のたびに、山に積もった火山の噴出物を巻き込んで住宅地を襲った。

 中でも93年4月28日の土石流では、579棟が土砂に埋まった。一方で、麓の集落の住民は当時、避難していたため、犠牲者はゼロだった。

 大量の火山灰も人々を苦しめた。健康、農業、漁業への影響に加え、観光客も激減。地域経済のダメージは大きく、火砕流、土石流とともに復興の妨げとなった。

 国内には111の活火山があり、東北だけでも岩手県の岩手山、宮城・山形県にまたがる蔵王山、福島県の吾妻山など18を数える。活火山を抱く地域は、普賢岳をはじめとする過去の噴火災害の教訓を生かしたい。

 噴火災害は火砕流、土石流、火山灰のほか、噴石、山体崩壊、融雪型火山泥流、火山ガスがある。犠牲を減らすには、まず専門家、行政、住民が火山に関する情報と危機感を共有することが大事だ。

 行政はハザードマップや避難施設の周知、円滑な災害情報の伝達、防災教育といった取り組みのほか、長期避難を見越した被災者支援策を考えておくべきだろう。

 住民はハザードマップなどで地域の火山のリスク、避難場所や経路を確認し、迅速な避難につなげてほしい。

 2000年に噴火した北海道の有珠山の場合、火山性地震の増加などを受けて噴火前に住民が避難し、人的被害がなかった。

 噴火警戒レベル1(平常)でも噴火は起こり得る。長野、岐阜県境にある御嶽山は14年、警戒レベル1で噴火。戦後最悪の63人の犠牲を出す一因となった。

 噴火に遭遇したら頑丈な建物や岩陰に身を隠す。タオルで口元を覆うと熱風を吸い込まずに済む。水でぬらせば、火山ガスにも効果がある。

 もっとも、火山の恩恵は数知れない。麓からも頂からも美しい眺め。温泉、登山といった行楽に加え、土壌を肥やし、湧き水は漁場を育む。

 恵みの山は、時に怖い表情を見せる。事前に準備し、早めの行動で対処したい。

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