<まちかどエッセー・深沢昌夫>年中行事と子ども文化

深沢昌夫[ふかさわ・まさお]さん 1963年盛岡市生まれ。東北大大学院博士課程中退。98年度歌舞伎学会奨励賞受賞。宮城学院女子大教授。同大学芸学部日本文学科長。専門は古典文学と芸能。著書に『現代に生きる近松-戦後 60年の軌跡』など。仙台市青葉区在住。

 日本人は忙しい。年末年始はもとより、2月は節分、3月は雛(ひな)祭りに卒業式、4月は入学式や入社式、5月は端午の節句、7月は七夕、8月はお盆や夏祭りがあるし、9月は重陽の節句に十五夜と、ほぼ毎月のようにさまざまな行事がある。さらに戦後はバレンタインやクリスマス、あるいは近年流行のハロウィーンなど、欧米由来のカタカナ行事も増えた。

 バレンタインデーなどは、もともと男女問わず大切な人に贈り物をする日であった。これが日本に入ってきて、女性が好意を寄せる男性にチョコをプレゼントする日になった。あるいはクリスマスなどもキリスト教とはあまり関係なく、親しい人たちで集まって会食したり、ケーキを食べる日みたいになっている。ハロウィーンはほとんど仮装行列の日である。

 でもまあ、みんなが楽しければそれでいい。関連業界も潤うし、同じ行事に参加し共食することで仲間内の一体感が強まるという効果もあるだろう。

 ところで、先にあげた年中行事のうち、9月9日の重陽の節句(菊の節句)など、長寿を祝うような、どちらかといえば大人向け、老人向けの行事(中国ではズバリ「高齢者の日」だそうである)は昨今なじみが薄い。これに対して、比較的歴史の浅いカタカナ行事を含め、今なお年中行事として実際に行われているものを見ると、何かしら子どもが関わっているように思われる。わが家もそうだったが、子どもがいる家庭は比較的イベントを大切にする傾向があり、節分や雛祭り、端午の節句、七夕などに関与する率が高いので、小さな子どもでも雛祭りや子どもの日は知っていよう。

 今はあれこれ議論している余裕はないが、基本的に日本では古くから子どもを大切にする文化や風習があった。幕末に来日し、初代総領事、後に全権公使となったイギリスのオールコックなど、「日本は子どもの楽園だ。日本ほど子どもがかわいがられている国はない」とまで言い切っている。わが子(小さい頃ですが)や孫を毎日「かわいい、かわいい」と言って笑われている私にとってはごく当たり前のことだが、年中行事の盛衰を見れば、やはり日本は今なお子どもを大事にしているような気がする。できれば今後もそうあってほしいものである。
(宮城学院女子大教授)

河北新報のメルマガ登録はこちら
まちかどエッセー

 仙台・宮城在住の執筆者が、それぞれの活動や暮らしで感じたことをつづります。

秋季高校野球東北大会 勝ち上がり▶


企画特集

先頭に戻る