社説(6/18):「緊急事態」解除へ/足元の状況は不安だらけだ

 五輪の舞台作りに新型コロナ対策を合わせようとするなら、もっての外だ。最大のスポーツイベントだからといって、特別扱いは許されまい。

 政府は東京都や大阪府など10都道府県に発令した緊急事態宣言を、沖縄県を除いて期限の20日に解除する。

 果たして、足元の状況は解除に値するほど安定しているだろうか。ワクチンが普及しておらず、従来の対策に頼らざるを得ないのが実情だ。感染力が一段と強いとされるインド株のまん延危機にもさらされている。

 東京は新規感染者数の減り具合が鈍いのも懸念材料だ。10万人当たり19人で大阪(9・3人)の2倍以上だ。主な繁華街の6月初旬の人出は、1カ月前に比べ、3割ほど増えている。専門家がリバウンド(感染再拡大)を警戒する主因だ。

 人の流れを抑制するため、政府と都が有効なメッセージを発することが重要だ。再拡大の予兆を察知したら、再び全国に波及しないよう機敏に対処すべきだ。

 専門家組織は、インド株の影響が仮に小さかったとしても、五輪期間中に緊急事態宣言が再度必要になる可能性があるとの試算を示した。感染状況が著しく悪化した場合、政府はそうした厳しい措置を躊躇(ちゅうちょ)してはなるまい。

 宣言は解除されるが、感染状況がおしなべて良くなったわけではない。

 解除に際し、政府側は感染状況がステージ3(感染急増)相当に落ち着き、改善傾向が確実に認められるかどうかを重視してきた。

 東京や大阪などは確保病床の使用率や重症者用病床の使用率は低下したものの、安定して下がっている状態とは言い切れない。北海道、愛知、大阪、福岡は10万人当たりの療養者数が、沖縄と同様にステージ4(感染爆発)の「30人以上」を下回っていない。

 休業・時短営業で打撃を受けている飲食業界などに配慮し、経済を回すためには規制の緩和は欠かせない。だが、見切り解除は反動が大きく、感染状況を逆に悪化させる。解除の可否は科学的な根拠に基づき、自治体ごとにもっと慎重に判断すべきではなかったか。

 政府は、宣言解除後1カ月程度は経過措置として、スポーツ大会など大規模イベントの観客数は1万人を上限と決めた。五輪の観客基準に準用する考えだ。

 菅義偉政権は観客を入れた五輪開催に前のめりだ。その姿勢をより強めることになったのが、英国で開かれた先進国7カ国首脳会議(G7サミット)だ。菅首相は開催への決意を表明し、G7首脳は支持する意向を示した。

 緊急事態宣言をまたも発令するリスクが指摘される中、「国際公約だ」として、無理に「五輪シフト」を推し進めれば、国民の離反は避けられまい。

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