<手腕点検>美里町・相沢清一町長 学校整備にPFI方式を導入

 東日本大震災から10年がたった今年、地方自治の現場は新型コロナウイルス感染症との闘いに引き続き追われた。少子高齢化や人口減少、地域経済の疲弊も深刻化。難局のかじ取りを担う市町村長は地域の負託に応えているか。住民や関係者の声を交えて検証する。

小牛田朝市の会場で町民と言葉を交わす相沢町長(中央)=5月16日、美里町

 長年の懸案がようやくヤマ場を迎える。美里町の相沢清一町長(68)は、中学校再編に道筋を付けて2期目を締めくくろうとしている。

 三つある中学校を統合し、新中学校を2025年4月にJR小牛田駅東側に開校する。現在の校舎は、いずれも築40~55年。少子化と老朽化への対応は待ったなしで、町は12年に再編に着手した。

 総事業費は校舎解体費を含め約55億円。民間資金活用による社会資本整備(PFI)方式を導入。民間業者が設計と建設、維持管理を包括的に行い、従来の方式より町の負担額が約6%抑えられるとされる。

 PFI方式による学校整備は東北では珍しく、英断と言える。「民間の発想と活力を生かし、住民負担の軽いPFIは時代の主流になる」と相沢氏。町は本年度、用地取得とPFI業者の選定を行う。

 中学校統合にめどを付けた後は、町産業活性化拠点施設構想の再始動に着手する。相沢氏は日頃、「美里は観光、物産が弱い」と感じていたという。構想では、国道108号沿いに施設を整備し、「美里ブランド」の農産物をPRして人を呼び込む。

 基本計画案の完成までこぎ着けたが、財政負担が大きい中学校再編との同時進行は見送った。副町長として1期目を支えた佐々木守氏(66)は「教育の次に農業振興と、役場の組織を粘り強く一枚岩にまとめた」と振り返る。

 相沢氏は、旧小牛田町議と美里町議を2期ずつ務め、美里町議会議長を経て14年に初当選した。自身がコメ農家でもあり、国内最大級のレタス生産拠点誘致や香港へのコメ輸出などの農業振興に尽力してきた。

 町政では対話を重視する「調整型」。町民や町議会との関係はおおむね良好で、過去2回の町長選は無投票だった。大きな失政はないものの、重点公約にした産業活性化拠点施設整備は道半ばで、財源確保や近隣施設との差別化など実現には課題が残る。

 東北電力女川原発(女川町、石巻市)の再稼働に反対し、町長として一定の存在感を示した。一方で町は人口減が進み、「美里ブランド」を託せる特産品は少ない。独自のまちづくりを目指す涌谷、加美両町に比べると埋没気味だ。

 町幹部OBは「波風を立てないだけではなく、自ら仕掛ける姿勢を示してほしい。宅地整備など人口減を止める方策がなければ、じり貧になる」と踏み込むことを求める。明確な町の将来像をどう打ち出していくのか。任期は残り7カ月に迫っている。
(小牛田支局・横山浩之)

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