社説(6/21):老朽原発の再稼働/原則40年 なし崩しに懸念

 運転開始から40年を超えた関西電力美浜原発3号機(福井県美浜町)が、近く再稼働する。東京電力福島第1原発事故を契機に運転期間を原則40年に限るルールが定められて以降、初めてのケースとなる。

 最後の関門となった地元同意の取得に当たり、政府は原発1カ所当たり最大25億円の新たな交付金を支出する地域振興策を提示。さらに、保坂伸資源エネルギー庁長官は「環境性能や供給安定性に優れた原発の重要性は高まっている。40年超運転は不可欠だ」と述べて、福井県の杉本達治知事を説得した。

 これまでの経過から浮かび上がるのは、脱炭素を大義名分に「原則40年」ルールを骨抜きにする一方、立地地域への利益誘導を再び強化しようとする政府の姿勢だ。

 巨額の交付金で脱原発を求める世論や安全性を巡る議論を封じてきた原子力政策の負の歴史を繰り返すことにはならないか。いま一度立ち止まって考えるべきだろう。

 「原則40年」ルールは、炉心溶融を起こした福島第1原発1~3号機が運転開始から35~40年経過していたことを踏まえて定められた。運転期間の延長はあくまで「例外」で、電力不足などの事態に備えるため、1回最長20年間に限るとされていた。

 1976年に運転を開始した美浜3号機は、同じ関西電力の高浜原発1、2号機(福井県高浜町)とともに2016年、原子力規制委員会の審査で延長が認可された。だが、地元同意に向けた議論は決してスムーズに進んでいたわけではない。

 関電は福井県が求めた使用済み核燃料の県外搬出について、むつ市の中間貯蔵施設の利用を選択肢の一つとしているが、むつ市の反発で暗礁に乗り上げている。

 福井、岐阜、滋賀3県の約28万人が対象となる住民避難計画は、各地の原発と同様に実効性に疑問が生じている。滋賀県や京都府の住民からは過酷事故により、近畿圏最大の水源でもある琵琶湖の汚染を懸念する声も絶えない。

 決め手となったのは、やはり国の強い働き掛けだ。菅義偉首相は、温室効果ガスの排出を50年に実質ゼロにすると宣言。政府、自民党は「発電時に温室効果ガスを排出しない」と強調し、原発の再稼働に前のめりだ。

 政府のエネルギー基本計画でも、30年度は電力供給の約2割を原発で賄うことになっている。30基程度の稼働が必要と見込まれ、そのためには少なくとも40年超原発の10基近くが運転を延長していることが前提だ。美浜3号機を突破口に、40年超原発の再稼働を全国に広げたいとの思惑が透けて見える。

 事故の教訓に基づく「原則40年」ルールがなし崩しになってはならない。「例外」の既成事実化には、しっかりとした歯止めが必要だ。

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