<まちかどエッセー・小田中しおり>学ぶ勇気

小田中しおり[おだなか・しおり]さん 作業療法士。1963年仙台市生まれ。旧国立仙台病院付属リハビリテーション学院卒。98年国家資格取得。生活介護施設、障害児等療育支援事業所、特別支援学校で身体・発達障害児者を支援している。仙台市青葉区在住。

 ある講座の申込書を片手に部屋の中を10往復しても決心がつかず、いったん机の中にしまいました。その時ふと学びに関する一冊の本を思い出しました。

 仕事に役立ちそうな講座やセミナーはほぼ参加することにしているという著者は、遠い所でも忙しくてもそれを理由にせず、やりくりして各地に出向く様子が描かれています。講座などに参加することは講師や参加者から刺激をもらえ、幅広い情報も得られるなど、本では学べないことが多いという内容でした。机の中から申込書を引っ張り出した私は、8万円近い参加費に少しため息をつきましたが、勇気を出して申込書を送付したのでした。

 それはタクティールケアと呼ばれる北欧のマッサージの講座でした。あるテレビ番組で痛みや緊張が取れる様子が実験を交えて紹介されていました。全身に痛みを伴う難病の人が、つらくてほぼ1日横たわっていたのに、そのマッサージによって日常生活に支障がないぐらいまで動けるようになったのです。私が関わっている全身に強い緊張を及ぼす脳性まひなどの障害児・者へのケアに絶対に役立つと直感しました。

 北欧のマッサージはもみほぐさず、肌をなでるようにすると以前聞いたことがありましたが、信じられませんでした。未熟児にマッサージすると成長が促されたり、痛いところに手を当てると痛みが和らいだりすることと関係があるのでしょうか。この講座はこれらの疑問をも解決してくれたのです。

 まるまる2日間の実技中心の講座で、その手法を翌日にも実践できるよう教え込まれました。幸せホルモンの一つ、オキシトシンの効果を利用するものです。受講生同士で練習するのですが、体の緊張が緩んで楽になるのを実感しました。私たちが体を意図的に滑らかに動かすには全身が強く緊張していてはうまくいかないので、適度に緊張を取ることがとても大切です。

 コロナ禍で不自由な暮らしが続いていますが、リモート講座や講演会の普及で金銭的に悩まずにいろいろな講座に参加できることは夢のようです。先日も京都に住む作業療法士の同級生から勧められた講座に申し込んだばかり。今後はリモートを積極的に活用し、学びを臨床でしっかり生かしたいと思っています。
(作業療法士)

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まちかどエッセー

 仙台・宮城在住の執筆者が、それぞれの活動や暮らしで感じたことをつづります。

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