社説(6/22):ワクチン接種と差別/打たない自由 認める社会に

 新型コロナウイルスのワクチン接種は、職域や大学などでもきのうから本格的に始まった。接種が加速化する中、打たないことを選択した人に対する差別や強制が一部で起きている。

 接種するかしないかは、あくまでも個人の判断に委ねられるもので、厚生労働省もホームページ(HP)でそのことを強調している。打たないことで差別や偏見にさらされたり、不利益を被ったりすることがあってはならない。

 ワクチンは感染そのものを防ぐ効果が確認されており、重症化を防ぐ効果も高い。安全性に関して、厚労省の専門家部会は「重大な懸念は認められない」としている。

 社会全体で見れば、多くの人が接種することが望ましい。だが、それは、接種するのは当然という風潮にもなりかねず、副反応への不安や持病などからワクチンを接種しないと決めた人たちへの差別的な扱いを生んでいる。

 日弁連が5月に行ったワクチンに関する「人権・差別問題ホットライン」には、2日間で当事者や親族らから計208件の相談が寄せられた。

 看護学生が実習を受けさせてもらえず、単位が取れなくなるという訴えのほか、医学生が退寮を求められたり、病棟実習を受けさせないと言われたりした。介護施設では部署替えを求められ、退職した人がいた。

 このほか、職場に「受ける」「受けない」のチェック表が張り出されたり、名札に接種の有無を表示されたりといった、プライバシーの侵害に関するケースもあった。

 接種が広がれば、そうした被害はさらに増えることが予想される。

 ワクチンに不安を抱く要因の一つに、副反応のほか、開発から臨床までの期間が従来のワクチンに比べて短いことや、「メッセンジャーRNA」という遺伝子を使った前例がほぼないことなどがある。そうした不安からか、ワクチンに関する非科学的で誤った情報が一部で流布している。

 厚労省はワクチン接種後の死亡例や副反応の疑いがある事例に関してHPで公表している。因果関係が不明とされるものも多いが、接種するかどうかを決める際には、そうした情報も参考にしながら、冷静に判断することが望まれる。

 12歳以上の若年層で接種が進めば、学校現場でワクチンを打たないことによる差別やいじめが起きることが懸念される。その点にも配慮と対策が求められる。

 マスクの着用や飲食店等の営業自粛などでも見られたように、コロナ下では同調圧力が高まりがちだ。だが、ワクチン接種は身体に変化をもたらす可能性があるだけに、個人の判断はより尊重されなければならない。ワクチンを打ちたくない人や打てない人の不安に対処する窓口の拡充など相談体制の充実も必要だ。

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