解雇の外国人、手薄な支援 コロナ禍で働く環境悪化

アルバイト先から突然解雇され、POSSE仙台支部で相談を受ける女性(手前)

 新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、突然解雇されるなど、外国人の労働環境が悪化している。職を失って生活苦に陥り、支援を必要とする人が増えている。(生活文化部・矢嶋哲也)

 仙台市若林区に住むベトナム人の女性(32)は2月上旬、アルバイト先の太白区のすし店から突然解雇された。理由はおろか、「解雇する」という直接の通告すらなかった。同僚の外国人から「店長がもう来ないと言っていた」と聞き、解雇の事実を知ったという。

 「3月末まで働く予定だった。最後に出勤した時も店長から何も言われず、びっくりした」。女性は当惑気味に振り返る。

 ハノイ近郊の出身で、4年前に来日した。青葉区の日本語学校に2年通った後、同区の専門学校でパソコンの操作やビジネスマナーなどを学び、今春卒業した。日本での就職を希望したが、新型コロナの影響もあって、外国人を採用している企業が少なく、就職先は見つかっていない。

 すし店では2018年11月から働いていた。月曜から金曜の午前6時半~正午、総菜作りなどをして月収は10万円程度。給料はアパートの家賃や食費など、生活費に充てていた。

 解雇された後、ベトナムの実家から10万円を仕送りしてもらったが、これ以上当てにできない。「インターネットや友人の紹介で仕事を探しているが、難しい。レストランでアルバイトをしている友人も、昨年から短い時間しか働かせてもらえない。コロナの影響でお金に困っている外国人は多い」と女性の表情は暗い。

 女性は、友人の紹介でNPO法人POSSE(東京)の仙台支部に窮状を相談。「どうして首にしたのか、店長の話を聞きたい」と訴える。

 東北6県には2020年6月現在、約6万5000人の外国人が暮らす。約1万4000人が集まる仙台市には、若い留学生が多い。新型コロナウイルスの影響でアルバイト先がなくなるなど、生活に困窮する人が少なくないという。

 19の言語で電話相談に応じる仙台多文化共生センター(青葉区)に昨年寄せられた相談は約1000件。約500件がコロナ関連だった。「増えたのは昨年6月ごろから。生活支援制度を使いたいが申請が難しいといった内容が多く、食べ物や住む場所がない人もいた」とセンター長の武山真紀さん(57)が説明する。

 地域別ではネパール出身者が最も多く、ベトナム出身が続いた。多言語の相談に対応できる機関が少なく、宮城県外からの問い合わせもあった。

 センターは相談内容に応じて、民間支援団体の紹介や支援制度の予約代行などをする。武山さんは「弁護士や行政書士らによる専門相談会も月1回開いている。少しでも困っている人の力になりたい」と強調する。

 19年度から外国人労働者の相談を本格的に受け付けているNPO法人POSSE仙台支部(青葉区)にも、これまで約140件の相談があったという。

 仙台支部代表の森進生さん(31)は「外国人労働者の多くは、失職すると帰国以外の選択肢がない。生活保護を受給できるようにするなどしないと、支援にもいずれ限界がきてしまう」と指摘する。

スマートフォンで相談を受けるトゥアンさん=仙台市青葉区

 在仙台ベトナム人協会会長のド・バン・トゥアンさん(40)=太白区=はネットなどを通じ、国内のベトナム人からさまざまな相談を受けている。新型コロナの影響で、仕事にまつわるトラブルが増えているという。

 4月中旬、緊急支援を要する相談を受けた。ホーチミン市出身で、ベトナムの大学を卒業後、昨年末に来日した男性(26)からだった。熊本県の会社でシステムエンジニアとして働いていた男性は20日、会社から「明日から来ないで」と告げられた。

 トゥアンさんはすぐさま、出社して規定の勤務時間中は職場にいるよう伝えた。「基本給の半額以下しか支払われていないことも分かり、地元の労働局などを通じて不払い分を支払うよう交渉した」と説明する。

 男性は「日本の技術を勉強し、将来はベトナムに戻って日本の会社で働きたいと思って来日したが、何も教えてもらえなかった」と憤る。4月末で会社を辞め、日本国内で職探しを始めている。

 「多くのベトナム人が日本で働いているが、法律などがよく分からず、母国語で相談できる人も周囲にいない」とトゥアンさん。新型コロナで、外国人が日本で働く際の壁が顕在化したと痛感している。

【外国人も利用できる主な生活支援制度】
・緊急小口資金
 10万~20万円を無利子で借りられる。返済は2年以内。
・総合支援資金
月額最大15万~20万円を3カ月間無利子で借りられる。返済は10年以内。
窓口はいずれも、居住地の市区町村社会福祉協議会。
・住宅確保給付金
仕事をなくし、収入が減った人に3カ月分の家賃を支給。窓口は居住市町村。

【主な相談窓口】
仙台多文化共生センター通訳サポート電話022(224)1919
NPO法人POSSE仙台支部022(302)3349
在仙台ベトナム人協会080(9600)8686

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