社説(6/26):政府の孤独・孤立対策/地方移住 支援の新たな柱に

 新型コロナウイルス感染症の影響で深刻さを増す孤独や孤立の問題に関し、政府は本年度、初の実態調査に乗り出す。経済的な困窮だけでなく、自粛生活の長期化、コミュニケーションを深める機会の著しい減少など複雑な要因が絡み合う問題の解決を、地方の視点からも考えたい。

 政府は内閣官房に対策室を新設。5月末にあった全府省庁の連絡調整会議で、年内に支援策をまとめた「重点計画」を策定する方針を示した。実態把握の調査は12月~来年1月に実施し、年度内に結果を公表する見通しだ。

 いじめや不登校、児童虐待、ドメスティックバイオレンス(DV)に加え、介護など家族の世話をする18歳未満の「ヤングケアラー」、女性を取り巻く「生理の貧困」といった新たな問題も浮き彫りになっている。担当の坂本哲志1億総活躍担当相は「ここ10年間減っていた若者と女性の自殺が増加に転じている」と厳しい現状を説明する。

 コロナ禍による孤独・孤立の影は、厚生労働省が今月発表した人口動態統計にも表れている。2020年生まれの赤ちゃんの数は、1899年の統計開始以来最少の84万832人(前年比2万4407人減)。婚姻件数も52万5490組(7万3517組減)で戦後最少を記録した。

 21年の出生数は国の推計より10年早く、70万人台に落ち込むとの予測が出ている。雇い止めなどによる生活苦や人間関係の途絶、「3密」回避で出会いの場が失われた影響を指摘する声もあり、一連の問題と深く関わっている。

 負の連鎖とも言える状況から脱却を図るには、経済的な自立に加え、生きる意味と社会での役割を実感できる仕組みが欠かせない。問題の解決に向けた拠点を地方に移し、コミュニティー再生の動きと連携した支援の可能性を探れないだろうか。

 東北など人口減少や少子高齢化に直面する地域は、定住による人の力を必要としている。都市部ほど多くの収入がなくても生活は可能で、1次産業などを通じた支え合いの風土も地域に残されている。東日本大震災の被災地では多くの移住者を迎え入れ、共に復興へと歩む素地も育まれつつある。

 孤独・孤立対策を担当する政策参与として、政府は元厚労事務次官で支援団体との関わりが深い村木厚子氏を登用した。悩みを抱える当事者だけでなく、サポートに当たるNPO法人などの地方移転を支援策のキーワードに組み込んでほしい。

 菅義偉首相は自助を中心に据えた社会づくりを提唱しているが、公助の支えと合わせて「共助の精神と仕組みをつくる」(坂本担当相)必要性が改めて求められている。「都市部の孤独」と「過疎地の孤立」をつなぎ、補完し合う試みに、好循環を促すきっかけを見いだしたい。

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