社説(6/27):岩手競馬薬物問題/原因究明されず 残る疑問

 岩手競馬の禁止薬物問題は、原因が究明されないまま終止符が打たれた。公正なレースを長年支えてきた馬主や競馬ファンには納得し難い結末だろう。

 岩手競馬では2018年7月~19年11月、競走馬計12頭から相次いで禁止薬物の筋肉増強剤ボルデノンが検出された。岩手県競馬組合(管理者・達増拓也知事)は19年1月、何者かが故意に投与したと判断し、競馬法違反の疑いで容疑者不詳のまま県警に告発状を提出していた。

 県警は今年3月、偶発的に敷きわらから摂取された可能性が高いと結論付けて書類送検し、盛岡地検は4月に不起訴とした。

 県警によると、盛岡競馬場(盛岡市)と水沢競馬場(奥州市)で出走し、1~3着に入った計5頭が捜査の対象。厩舎(きゅうしゃ)に届く前の敷きわらからボルデノンを確認した。湿度や気温、保管状況など一定の状況下でボルデノンが自然発生する可能性があることが判明したという。

 複数の防犯カメラの映像には、不審な人物は見当たらなかった。一部に死角があり、人為的犯行は完全に否定できなかったものの、馬が偶発的に摂取した可能性が高いとの結論を出した。

 これに対し、疑問の声は根強く残る。発生源とされた敷きわらは各調教師が別個に調達していた点を踏まえ、県馬主会の幹部は「ボルデノンがあちこちで自然発生するのは不思議だ」と話す。

 捜査機関の一連の結論を受け、組合は5月、原因は人為的混入、敷きわらからの自然発生のいずれの可能性も否定できないとする見解をまとめた。これは、結局はっきりしたことは何も分からなかったとさらけ出したにすぎない。

 管理者の達増知事は5月14日の定例記者会見で「再発が防止され、公正な競馬が確保され、ファン、県民の信頼に応えられる岩手競馬であるようにと思う」と述べつつ、再調査の考えはないとした。

 原因究明なくして信頼回復はない。果たしてその覚悟が組合にあったのだろうか。

 問題発覚以降、警備員の増員や防犯カメラの増設、厩舎に敷いていたわらをウッドチップに変更するなどの再発防止策を講じてきた。薬物は出ておらず、効果はあったとみられる。だが根本的な原因が判明しないままの再発防止策は対症療法のようなものだ。薬物がまた出ればレース休止はおろか、岩手競馬の存続問題に発展するだろう。

 岩手は馬産地として知られる。岩手競馬は藩制時代に奉納競馬として始まったとされ、1886年には横浜、東京に次いで洋式競馬が開催された。初夏の風物詩チャグチャグ馬コと並び、古くから根付く馬事文化を後世に残すことを使命としてきた。県民が愛し、誇りとするこの文化を守るには、原因を突き止めることがやはり欠かせない。

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