「検証・郡市政 選択軸の現場」(3)地域の足 持続可能な交通網 急務

八ツ森号を利用し、病院から帰宅した藤島さん=6月中旬、仙台市青葉区新川

 仙台市西部の青葉区新川地区。6月中旬、「八ツ森号」のステッカーを貼ったタクシーが、中山間地にある一軒家の前に止まった。

 外は土砂降りの雨。ここに暮らす無職藤島末治さん(82)は車を降りると「玄関前まで来てくれて大助かりだ」と笑顔を見せた。

 週3回、透析治療で約15キロ離れた愛子地区の病院まで通う。地域交通の八ツ森号は、藤島さんの欠かせない移動手段だった。

 町内会などでつくる新川地区地域交通運営検討会は2020年8月、八ツ森号の試験運行を始めた。市交通局が21年3月、地区を走る市バス「八ツ森線」を収支悪化で廃止したため、地域唯一の足となっている。

 既存の路線バスに比べて運行経費が安く、小回りが利く地域交通は人口減少、高齢化時代の新たな移動手段として期待が大きい。

 検討会の石垣喜美雄会長(79)は「バス路線の廃止で『見捨てられた』と受け止める住民もいる。感情にも配慮しながら、本格運行に向け、歓迎される地域交通に育てたい」と話す。

 市交通局によると、市バス45路線は19年度、桜ケ丘線を除く44路線が赤字だった。毎年、一般会計から約30億円の補助金をバス事業会計に繰り入れるが、純損失は解消しない。新型コロナウイルスの影響で利用者はさらに落ち込み、経営悪化に歯止めがかからない。

 宮城交通(泉区)が運行する市内の40路線は全て赤字だ。19年度の1キロ当たりの営業経費は市バスより105円低いが、1キロ当たりの運賃は6・6円高い。市補助金の繰り入れがないため、逆転現象が起きている。

 青沼正喜社長(63)は「事業者、利用者に公平でない状況がある。交通事業者のプライドで踏ん張っているものの、限界は近い。公共交通を維持するため、市は民間事業者も支援すべきでないか」と提案する。

 市は21年度、路線バス事業を抜本的に見直すため、事業者や専門家と「地域公共交通計画」を策定する。市郊外と都心部を結ぶ「幹線区間」、鉄道駅に結節する「フィーダー区間」などに路線を分け、地域交通に転換するエリアを定める。

 「路線バス事業の経営改善は、もう待ったなし」。郡和子市長(64)は市議会2月定例会でこう危機感を募らせ「持続可能な公共交通ネットワークの構築に向け検討する」と表明した。

 計画策定では市バスと宮交バスが乗り入れる路線で共同運行の可能性も探る。実現すれば、両バスのダイヤを調整して等間隔の運行ができる。市交通局の通学定期券「学都仙台 市バス・地下鉄フリーパス」の宮交バス利用者への適用、運賃水準の均一化も視野に入れる。

 公共交通に詳しい福島大の吉田樹准教授(地域交通政策)は「まずは公共交通の将来像を関係者同士で話し合うことが大切。その結果、都市戦略上、必要な路線は公営、民営の区別なく自治体が責任を持って支えるべきだ」と指摘する。
(報道部・古賀佑美)

[地域交通]公共交通空白地の郊外部、中山間地で地域団体を運営主体に運行する乗り合いバス、デマンド型タクシーなど。仙台市内では2006年に太白区坪沼地区が「つぼぬま号」を初めて導入。21年4月に宮城野区燕沢地区で「のりあい・つばめ」の本格運行がスタートした。試験運行中の「八ツ森号」は、青葉区新川地区のデマンド区域とJR愛子駅など22カ所で乗降可能。市は試験運行に経費の最大95%、本格運行に90%を補助する制度を用意する。

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