社説(6/28):宮城産生カキ出荷延長/本格運用へ衛生対策徹底を

 宮城の代表的な海産物をリスクから守る取り組みとも言えるだろう。

 県産の生食用カキについて、今季の出荷期間の終了時期がこれまでの5月末から6月末に延長された。沿岸部でのまひ性貝毒による出荷への影響を考慮するとともに、新型コロナウイルス下での価格低迷も踏まえた暫定措置となる。関係機関は衛生管理対策に力を入れながら本格運用につなげてほしい。

 県の指導指針では、生食用カキの出荷期間は9月29日~翌年5月末と定められている。県漁協(石巻市)が今年4月、「海中で出荷を待つカキをより多く水揚げ可能にしてほしい」と6月末までの期間延長を要請。県は5月上旬、海水を含む衛生検査の実施や処理場での衛生管理計画の記録、報告などを条件に延長を許可した。

 3年間の試行期間を設定。順調に経過し、県が安全に出荷できると判断した場合、指導指針を改正して正式に期間を延ばすという。

 県漁協によると、今季の生食用カキの出荷量は4月末時点で1392トン。5月は100トン、6月は80トン程度を見込んでいる。死滅が相次いだ昨季の1327トンは上回ったものの、例年の1700~1800トンと比べれば少なくなるという。

 沿岸部に分布するカキは、近年になって食品衛生法の規制値を上回るまひ性貝毒が検出され、生産者らが断続的に出荷の自主規制を余儀なくされてきた。とりわけ取扱量の多い石巻湾東部では今春、規制が1カ月も続いた。

 生産現場でカキ殻をむく作業に当たる「むき子」の人数には限りがあり、出荷規制が解除された後も挽回を図るのは簡単な状況ではない。

 状況に追い打ちを掛けるのが新型コロナウイルスだ。外食需要の落ち込みで、今季の10キロ当たり平均単価は約1万2000円と、例年より3割近く下がっている。今回の出荷期間の延長は、苦境にあえぐ生産者にとって売り上げ機会の確保にもつながる。

 関係者によると、4~6月はカキの餌となる植物プランクトンが増えてカキの身が大きくなり、うま味が増す。県漁協は、6月の海水温が例年出荷を始める9月末より低い点から「必要な検査と気温上昇に伴う衛生管理を徹底することで、6月でも安心して食べられる」と判断。消費者においしいカキを提供したい県側も期待を託す。

 国の統計で宮城のカキ生産量は全国2位で知られる。東日本大震災で養殖施設が壊滅的な被害を受け、激減した生産量を生産者や団体、行政の努力で回復させてきた。

 出荷期間の延長でピンチからの脱出を目指す形だが、厳格な衛生環境が確保された上での措置ということを忘れてはならない。消費者の納得を得る意味でも万全の出荷体制を築きたい。

関連タグ

河北新報のメルマガ登録はこちら

企画特集

先頭に戻る