世界を覆った不条理な悲しみ。人々は人間の力を信じ、未来を見詰め、踏みだした。歩みを重ねて10年。東日本大震災を語ることは癒やしや励ましだった。困難を乗り越える力だった。悲劇を繰り返さない誓いであり、連帯だった。だから、われわれは語り続ける。
<東日本大震災はテレビのニュースで知り、3カ月後に、宮古市や野田村など岩手県沿岸部の被災地を訪れた>
二戸市の天台寺の住職を1987年から18年間務め、東北は縁の深い場所。震災の前年に背骨を圧迫骨折して以来、京都の寂庵(じゃくあん)で寝込んでいたが、津波や原発事故の映像を見て「寝てはいられない」という気持ちになった。すぐに被災地へ行かなければと思ったので、リハビリを頑張った。
現場を実際に見るのと見ないのとでは大違い。海岸の松林も家も何もかもなくなっていて、津波の威力、怖さを思い知らされた。避難所では、生活を根こそぎ奪われてぼうぜんとする大人の中で、子どもたちが元気だったのが印象に残っている。家族が行方不明という方も大勢いた。手をさすりながら話を聞き、まずは目の前の方が無事で何よりよかったと思った。私が法衣を着た坊主ということで、安心されているような気がした。
<東京電力福島第1原発事故を受け、一貫して脱原発を訴えている>
津波は天災、原発事故は人災。絶対にあってはならない。どれだけの人がひどい目に遭っているか。故郷や生活の拠点を奪われるのは、本当に悲惨だ。原発はもういらない。再稼働を認めてはならない。
それなのに、政治家は何をしているのか。福島の人々を何だと思っているのか。おかしいと思ったら、やっぱりおかしいと叫ばないと何も変わらない。一人一人が声を上げたら大きな声になる。
あとは選挙に行くこと。われわれの生活は、政治次第。一人でも多く選挙権を行使し、良い政治家を選ぶことが大事だ。
<震災から10年。心の平穏を得られず、孤独感や生きづらさを抱える人々がまだまだいる∨
被災地の皆さんは、この10年よく頑張ってきた。新型コロナウイルスの深刻な状況が加わり、大変な方もいるだろう。でも、つらいことはずっとは続かない。99歳まで生きてきて、本当にそう思う。
朝起きたら良い天気で花が咲いて、世の中きれいだなと思う一瞬がある。それがあれば、つらいだけの人生じゃなくなる。日常を当たり前ではなく、ありがたいと思いましょう。
仏教に「忘己利他(もうこりた)」という言葉がある。自分のことより、人が幸せになるために尽くすこと。災害はいつどこで起こるか分からない。自分も被災するかもしれない。だからこそ、自分ではない誰かが被災したとき、できる限りのことをしなければならない。
人のために。みんなが常にそう思えるようになったら、日本中にもっと温かい空気が流れるのではないでしょうか。
(聞き手は越中谷郁子)
[せとうち・じゃくちょう]1922年、徳島市生まれ。東京女子大卒。73年に岩手県平泉町の中尊寺で得度し翌年、京都市に寺院「寂庵(じゃくあん)」を開く。2006年に文化勲章。「夏の終り」「美は乱調にあり」や「源氏物語」の現代語訳など著書多数。
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