社説(7/3):石炭火力の輸出/支援終了を機に全廃目指せ

 脱炭素化を目指す国際的な潮流が一段と大きくなっている。日本は依存度の高い石炭からどう脱却するのか。具体的な道筋を描き、国際社会に明確なメッセージを送るべき局面に差し掛かっている。

 先進7カ国首脳会議(G7サミット)は先月、温室効果ガスの排出抑制対策が講じられていない石炭火力発電に対する新規の輸出支援を年末までに終えることで合意した。

 石炭火力を巡っては、英国やフランスなど5カ国が既に廃止を表明している。米国は電力部門から二酸化炭素(CO2)の排出を2035年までにゼロにする方針だ。

 これに対し、日本政府はCO2を多く排出する旧式で非効率な石炭火力は休廃止する一方、効率の高い設備は利用を継続。経済性などの理由で石炭火力を続けざるを得ない国に限り、高効率設備の輸出を支援するスタンスだった。

 高効率の石炭火力は平均的な設備より1~2割、排出削減が期待できるが、排出量は液化天然ガス(LNG)の約2倍とデメリットもある。

 G7首脳声明を受け、日本政府は石炭火力の輸出支援について、新たなCO2排出削減対策を導入しないと支援対象から外す方針を明らかにした。大幅なコスト増を余儀なくされ、輸出戦略は見直しが避けられなくなった。

 石炭は安価で保管が容易なため、国内発電量の3割を石炭火力が占め、依存度はG7で最も高い。

 東南アジアなどでは当面、発電の主力を担うとみられ、アジアのインフラ整備に浸透しようとしている中国も石炭火力の輸出を推進している。輸出戦略は中国の動向をにらみ、アジアでの主導権争いとも関わっている。

 こうした事情があるにせよ、国際社会が脱炭素社会の実現に努めている中で、日本の対応は一歩も二歩も遅れている。石炭火力の輸出そのものからも撤退すべきだ。

 菅義偉首相はバイデン米大統領が4月に主催した「気候変動サミット」で、30年に温室効果ガスを13年度比で46%削減する目標を表明した。

 従来目標の26%減から大幅に上積みし、菅首相は「さらに50%の高みに向けて挑戦を続けていく」と強調したが、数値の裏付けが不明確だ。

 G7サミット議長国の英国は各国に石炭火力の全廃を求めていた。首脳声明に廃止時期など踏み込んだ文言が盛り込まれなかったのは、日本政府が強く反対したためだと英国メディアは伝えている。

 11月には英国で国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP26)が開かれる。ここでも議長国を務める英国が、改めて石炭火力の全廃を求めるのは必定だろう。

 G7で石炭火力の輸出を支援しているのは日本だけだ。風圧はまさしく日本に向けられており、CO2主要排出国としての責任と実行力が問われよう。

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