<手腕点検>柴田町・滝口茂町長 アイデアで補助金を最大限活用

 東日本大震災から10年がたった今年、地方自治の現場は新型コロナウイルス感染症との闘いに引き続き追われた。少子高齢化や人口減少、地域経済の疲弊も深刻化。難局のかじ取りを担う市町村長は地域の負託に応えているか。住民や関係者の声を交えて検証する。

船岡城址公園を訪れた人と言葉を交わす滝口氏(右)=6月22日

 桜の名所として知られる宮城県柴田町の船岡城址公園。滝口茂町長(70)は2週間に1度ほど公園に出向き、来園者と言葉を交わす。新型コロナウイルスの影響でイベントなどの中止が相次ぐ中、公園巡りは市民目線を体感できる数少ない場だ。

 以前、公園を訪れた女性に言われた。「きれいなトイレがもっとあるといいですね」。観光を通じた交流人口拡大を重視する滝口氏は町の観光拠点の改善に向けて策を練った。

 目を付けたのが、国の新型コロナウイルス対策の地方創生臨時交付金。数十ある事業メニューのうち、訪日外国人旅行者受け入れの環境整備事業にトイレ改修を絡ませようと昨年、補助金申請した。

 元々の事業の補助割合は3分の1で、残りは町負担。今回はコロナ対策を名目に、補助対象分の町負担が8・5%で済むのを見逃さなかった。公園など7カ所のトイレ改修を今年3月までに済ませた。

 国の補助金を最大限活用し、町の負担を軽減させる「滝口流」の端的な例。「コロナで外出する機会も減り、もっぱら自宅で国の補助金メニューを調べるのが日課」と笑う。

 県職員を経て2002年に初当選後、現在5期目。県内町村の首長では数少ない非自民系。本人も公言してはばからない。政治スタイルも国会議員を筆頭に人脈を構築したり、国への陳情を繰り返したりすることにあまり興味を持たない。

 手間は掛かるが、国の予算メニューから町に合った事業を申請するスタイルを曲げない。滝口氏は「地方に無尽蔵に予算が付く時代は終わった。アイデアで勝負するしかない」と言う。

 自主財源の確保に向けては、ふるさと納税に力を入れる。観光プロモーションと連動させ、昨年は全国紙の全面広告を年2回出稿するなど首都圏向けにPR。20年度の寄付額は約17億円で、5期目が始まった18年度の8・5倍増になった。

 滝口町政に是々非々で向き合う自民系の森裕樹町議(44)は「政治手法や考えは違うが、ふるさと納税などで実績を上げているのは事実」と評価する一方、「政策が観光などへの偏りがある。企業誘致など経済活性化に向けた施策が見えない」と指摘する。

 任期は残り1年。「もう終わり」と周囲をけむに巻くこともあるが、額面通りに受け取る人は少ない。多選批判も必至の中で6選を目指すのか、それとも引退か。町長派、反町長派双方が決断を注視している。
(大河原支局・山口達也)

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