社説(7/8):熱海の土石流災害/自助力高め 早めの避難を

 濁流がすさまじい勢いで斜面を下り、谷沿いの住宅を襲った。土石流の映像を見て、そのスピードと破壊力に驚いた人は多いのではないか。

 濁流の直撃を受けた木造家屋は瞬時にバラバラに砕けた。目撃してから走ったのでは、逃げ切るのが難しい。まさしく山津波。東日本大震災の大津波が頭をよぎる。

 梅雨前線の影響で3日、東海や関東を中心に激しい雨が降り、静岡県熱海市で大規模な土石流が発生した。被災した家屋は計122棟。捜索、安否確認が進むにつれ、犠牲者が増えている。

 静岡県は土石流の危害が住民に及ぶ恐れがあるとして、被災現場周辺を土砂災害警戒区域に指定していた。全国の指定状況は今年3月現在、21万711カ所。東北でも1万9706カ所を数え、似たような災害がいつ発生しても不思議ではない。

 警戒区域周辺で土石流から身を守るには、早めの避難に尽きる。まずは自宅周辺の災害リスクをハザードマップで確認してほしい。区域外に移動できないケースを想定し、避難できそうな頑丈な建物も見つけておきたい。

 パソコンやスマートフォンを使えば、災害リスク情報を地図上にまとめた国土地理院のウェブサイト「重ねるハザードマップ」でも手軽に調べられる。試しに、静岡県熱海市を入力すると、今回の土石流の発生場所は「土石流」「土石流危険渓流」の警戒区域として彩色されている。

 大雨では降っている雨に関心が向きがちだが、土壌に含まれる雨にも注意が必要だ。熱海市では3日午前3~4時に、土壌の水分量から割り出す土砂災害の危険度が最高レベルに達した。

 長雨の場合は、雨脚が弱まった後も災害危険度が高いままのことが多く、今回もそのような状況で土石流が起きたとみられる。土砂災害の危険がある領域は、気象庁ウェブサイトの危険度分布地図「土砂キキクル」で確認できる。

 2018年の西日本豪雨、19年の台風19号、そして20年7月豪雨と、国内では毎年、豪雨災害が発生。もはや異常気象が常態化し、過去の常識は通用しない。

 熱海市は今回、避難指示を出さなかった。行政が最善を尽くすのはもちろんだが、震災を経験した私たちは、構造物を含めて行政の防災対応が万能ではないことを知っている。不測の事態に身を守れるよう、自助力を高めたい。

 避難開始のタイミング、てんでばらばらに逃げるといったルールを事前に家族と決めておけば、速やかな動き出しにつながる。幼児や高齢者がいるなら、大雨になる前、日没前の自主避難をあらかじめ考えておいてほしい。

 そして、豪雨災害の恐れがある時は、災害情報を小まめにチェックし、自分と家族のため、自らの判断でためらわずに逃げよう。

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