(9)玉葱の皮や歯ブラシの水を切る/一力 五郎(1902~1947年)

 1946年作。今の世だと学生アパートの流し場の感じか。歯磨きも調理も済ます古ぼけたステンレスの流しの隅。捨てられる前の玉葱(たまねぎ)の皮は、運命に抗(あらが)うかのように人の目を刺激する。暗く鬱々(うつうつ)たる暮らしの中にも、思わずはっとさせられる強烈な詩のかけらが潜んでいる。作者は別号杜野光、鋭い感覚の句で「東北の山口誓子」とも評された。47年に45歳で早世。河北新報社前に<嵯峨菊のたとへば筆の穂のみだれ>の碑が残る。遺稿集『嵯峨菊』より。(浅川芳直)

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秀句の泉

 「秀句の泉」は、俳句の魅力を伝えます。執筆は俳人の永瀬十悟さん(福島県須賀川市)、浅川芳直さん(宮城県名取市)、及川真梨子さん(岩手県奥州市)の3人。古典的な名句から現代俳句まで幅広く取り上げ、句の鑑賞や季語について解説します。


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