【動画】カキ、タコ…南三陸の味に寄り添う白ワイン 宮城のワイナリー探訪(5)

海の見えるワイナリー

 東日本大震災で大きな被害を受けた宮城県南三陸町の志津川湾。太陽の光がさんさんと降り注ぐ漁港の一角に2020年1月、県内で最も新しい南三陸ワイナリーが開業しました。よく晴れた朝、豊かな自然に囲まれた町へと車を走らせました。
(編集局コンテンツセンター・佐藤琢磨)

海が見えるテラスでワインを飲むこともできる=2021年6月9日、宮城県南三陸町

 水産加工場のプレハブを改装したワイナリーは、試飲やランチが楽しめるレストランやショップを併設。白を基調とした明るい店内には南三陸産の水産加工食品がずらりと並びます。
 社長の佐々木道彦さん(48)は「町に酒の醸造所ができたのは初めて。オープンから1年が過ぎ、町の人にも親しまれるようになりました」と言います。
 
 2017年に町の地域おこし協力隊が企画したワイナリー計画は、入谷地区の小さな畑から始まりました。今では町内2カ所に計2・2ヘクタール、山形県上山市に1・7ヘクタールの畑があり、年に約1万5000本を製造しています。
 佐々木さんは19年1月、協力隊員としてワインプロジェクトに参加、法人化した南三陸ワイナリーの社長に就任しました。地元の海産物とワインを組み合わせ、食を通じて地域を盛り上げます。

 商品は赤、白、ロゼ、スパークリングワインや、町のリンゴで造ったシードルなど11種。看板商品はカキにぴったりな白ワインです。「欧州ならフランスのシャブリ、日本産なら南三陸と言われるようになりたい」。佐々木さんは目標を掲げます。
 ワインはオンラインストアや仙台市内の酒販店でも購入可能。白はいずれも売れ行き好調で、4種のうち3種が完売しました。
 発売されたばかりの「甲州シュール・リー」(750ミリリットル、2530円)はうま味が乗り、すっきりとした辛口。8月には、甲州のスパークリングも販売予定です。

南向きの斜面に整然と植えられたブドウ。右奥には三陸自動車道が見える=2021年6月9日、宮城県南三陸町

 佐々木さんの一押しは、青森県産スチューベンを使ったロゼ。かわいらしいピンク色で、穏やかなラズベリーや花の香りが立ち上ります。飲み口は白ワインのように酸味が効き、すっきりと爽やか。「魚にも肉にも合わせやすく、個人的にはホヤが一番。刺し身、煮魚、豚のしょうが焼きにも合うよ」
 震災から10年、さんさん商店街や町防災対策庁舎を訪れる人は多いものの、日帰り客ばかりで宿泊客が増えないのが佐々木さんの悩み。町の人口も減少が続きます。
 ワイナリーは今夏、志津川湾の魚介とともにワインを味わえるディナーと、漁場見学クルーズや漁体験を組み合わせた宿泊ツアーを企画しました。町特産のカキやタコは白ワインとの相性が抜群。泊まりがけでゆったり、ワインと南三陸の恵みを楽しんではいかがでしょう。
 「これからも町のにぎわいづくりに力を尽くす」と誓う佐々木さん。「ワイナリーを軸に消費者と漁師、農家をつなぎ、継続して交流できる仕組みをつくりたい」と夢を描きます。

水産加工場だったプレハブを改装したワイナリー=2021年6月9日、宮城県南三陸町
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