「高齢者の接種 急いで」 総務省の電話作戦に市町村長反発

 新型コロナワクチンの高齢者接種の前倒しを求め、総務省は大型連休前後、市町村長に電話作戦を展開した。菅義偉首相の宣言通り、全国で7月末に完了する見通しとなったが、地方財政を握る総務省のやり口に市町村は右往左往。地方の声を霞が関に届けるべき同省の「上から目線」に、違和感や反発を覚える首長は県内でも少なくない。

 「7月末まで接種を終わらせてください。お手伝いできることはありませんか」。宮城県内のある町長に4月下旬、同省の課長補佐級から電話が入った。

 「計画を決めたばかり。7月末は無理です」。その場で断った町長だったが、連休明けには県からも同様の問い合わせがあり、大幅な見直しを決断せざるを得なかった。

 課長補佐級が所属する自治財政局は地方交付税など地方財源を保障、調整する。町長は「圧力以外の何物でもなかった」と振り返り、「国からの要請で接種のスピードが上がったのは事実だが、体制構築は全て地方任せ」とぼやいた。

 「計画を立てて準備しても、期日までにワクチンが来なかったら、こっちは大混乱ですよ」。4月下旬、同省課長の電話を受けた市長はこう言い返した。

 危惧した通りの事態となり、ワクチンが不足した近隣の自治体に融通して地域全体で急場をしのいだ。国会議員の「激励」も受けたという市長は「国に要望を上げてから、(供給量を)査定するようでは困る。国は市町村の要望をしっかり聞いてほしい」と注文する。

 ワクチンが直接の所管ではない総務省の電話作戦を「圧力というより単なる確認」(県北の首長)と意に介さない声もあるが、「異例の対応」(県南の首長)との受け止めが大勢だ。菅首相は総務相を経験しており、アメとムチはたやすく想像できる。

 千葉大の新藤宗幸名誉教授(行政学)は「(従わなければ)地方交付税、とりわけ特別交付税で差をつけますよ、という制裁を市町村長が考えるのは当然」と指摘。「総務省が前面に出てくること自体がお門違い。中央と地方の民主的な関係を自ら破壊している。分権どころの騒ぎではない」と批判する。

 市町村へのワクチン供給量は7月後半から急減する見通し。政府がアクセル全開から急ブレーキを踏んだ格好で、現場の市町村に再び混乱が広がっている。

河北新報のメルマガ登録はこちら
新型コロナ関連

秋季高校野球東北大会 勝ち上がり▶


企画特集

先頭に戻る