社説(7/11):入試「改革」が頓挫/受験生に混乱 責任は重い

 国が大学入試改革の「2本柱」として、共通テストへの導入を目指していた英語民間試験と国語などでの記述問題が、ともに撤回される見通しになった。

 多くの受験生や学校現場をいたずらに混乱させた政治と行政の責任は極めて重い。

 少子化の加速により、文字通り「大学全入時代」が迫っている。入試制度がこのままであって良いはずはない。

 入りたい大学より入れる大学を選ばされる「偏差値輪切り体制」や生まれた家庭・地域による格差といった、より本質的な矛盾に対する議論は十分に深まっていない。

 誤った政策決定のプロセスを検証し、改革に向けた議論を早急に仕切り直すべきだ。

 「2本柱」は、初めての実施となる今年1月の共通テストから導入される予定だった。多くの専門家らが早くから制度設計のずさんさを指摘していたにもかかわらず、萩生田光一文部科学相は本番約1年前の2019年になって「自信を持って薦められる制度になっていない」と認め、土壇場で見送られた。

 19年末に設けられた有識者会議は、新学習指導要領で学ぶ学年が受ける25年以降の入試が論点となり、「2本柱」についてはいずれも「実現困難」と結論づけた。

 英語民間試験は受験機会の地域格差が、記述問題は採点の公平性への不安が解消できないことが主な理由だ。当然の判断と言うべきだろう。

 有識者会議は、大学教員を中心に高校の教員、PTA関係者ら18人で構成。英語民間試験と記述問題には、それぞれ一定の利点があることも認め、各大学の個別入試で導入を進める方向性を示した。

 さらに英語民間試験については、過疎地域の受験生が不利にならぬよう会場を拡充することや、低所得者層への受験料減免を国が主導して議論するよう求めた。

 いずれも受験生に近い「現場の声」が生かされた内容と言えるのではないか。

 一連の「改革」騒動は、安倍晋三政権時代の教育再生実行会議が「1点刻みの合否判定を助長している」などと、当時のセンター試験を問題視したことに端を発する。

 「グローバル人材」を求める産業界の強い意向を受け、官邸主導で進められた改革案づくりには強引さ、不透明さが指摘されてきた。

 大学入学志願者数は本年度実施の入試から、大学全体の定員を下回るとの推計もある。学びへの意欲を「1点刻み」でふるい落とすような入試は、もはや時代遅れだという意味では、教育再生実行会議の指摘にも理はあった。

 偏差値こそ公平、平等な指標であるかのような硬直した学力観から脱け出すためにも入試制度改革は重要だ。結果的に現行制度が維持されることになったが、学習者本位の大学入試の実現に向け、改めて議論を加速させたい。

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