<まちかどエッセー・津田公子>角を曲がれば

 つだ・きみこさん 川柳作家。石巻市出身。日本大卒。元中学教諭(主に仙台市、石巻管内)。川柳宮城野社同人、県川柳連盟理事も務める。県芸術祭川柳部門文芸賞(県知事賞)を受賞。河北新報創刊100周年記念河北文学賞川柳部門佳作。句集に「風の中」。東松島市在住。

 この欄の名「まちかどエッセー」の「まちかど」が句会で課題とされたら、どんな発想が浮かぶだろう。「街角」ではなく、ひらがなの「まちかど」は優しく、温かい。そこにある小さな出会いと、別れも連想される。車や行き交う人々の息遣い。周辺の建物やお店など、音も匂いも連れたつ。親しみやすいお題だ。
 私の住むまちは宮城県北部の田園地帯である。平たんな地が続き、次のまちかどには距離がある。かつてテレビ番組の収録で訪れた三遊亭昇太さんが「ここをのどかと言わないで、どこがのどかと言えましょう」と言っていたっけ。
 朝の空気の深さ、季節ごとの鳥の声、木々の揺らめき、いつもと変わらぬように見えるが、この1年余は新型コロナウイルスの影響が影を落とす。
 わが家の隣にある地区センターは地域の中心的な交流の場であるが、この1年開館することはほとんど無かった。以前までの人々の気配や笑い声は絶えて聞かれない。定時の市の広報は、コロナ感染予防策と接種のお知らせのアナウンスが主だ。人の往来も以前に増して少ない。タヌキやキジと出合うことが多くなった。小学生の朝の集団登校は、密を避けているのだろう。4、5人の隊列なのに長い。
 1年余の自粛生活の中で、ふとわが身の周辺を見る。新聞は毎日しっかり届き、郵便は1枚のはがきでもポストに納まっている。宅配便も。月刊誌も滞ることはない。医療に従事する方々ら、日々の生活の営みを支えて下さる方のなんと多いことか。コロナ感染への不安を抱えながら、社会に尽くして下さる各方面の人々へ、改めて敬意と感謝の気持ちが湧いてくる。と同時に、今のわたしにできることは何かと考える。
 7月の角を曲がった。今月こそ良いことに出合えますようにと念じる。甘い匂いが漂う。振り向くと栗の花房が静かに揺れていた。
<戻ったらもう放さない普通の日>

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まちかどエッセー

 仙台・宮城在住の執筆者が、それぞれの活動や暮らしで感じたことをつづります。


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