社説(7/14):ワクチン接種減速/不安解消へ国の努力足りぬ

 新型コロナウイルスワクチンの需給バランスが崩れ、混乱が広がっている。

 自治体側は国の方針に基づき接種に全力を挙げてきたものの、市区町村への配送量が減少し、接種の予約停止を余儀なくされている。

 政府は希望者全員のワクチンを9月末までに確保するとしているが、接種は滞りなく進むのか。菅義偉首相が表明した「10~11月の接種完了」を達成するため、医療機関に過度な負担を強いることにならないか。

 円滑な接種が可能となるよう、需給を綿密にコントロールする体制を構築しなければ国民の不安は解消されまい。

 政府は当初、「フルスイングで(ワクチンが)打てる」「(ワクチンは)どんどん来る」と強調したが、一転して「供給ペースに応じた計画的な接種」が必要だとし、接種の減速を求めた。

 市区町村で使う米ファイザー製ワクチンは4~6月に約1億回(約5000万人)分が輸入された。これに対し、7~9月は約7000万回(約3500万人)分と3割も減る一方で、自治体の配送希望量が増えたのが要因だ。

 菅首相は4月下旬、高齢者接種の7月末完了を表明した。希望者全員の接種を10~11月に終えることも、6月の党首討論で突然明らかにした目標だ。

 自治体は接種計画の再構築に追われた。医療現場はワクチンの打ち手確保に奔走し、接種のため診療時間を割いてきただけに、はしごを外されたと不満を募らせている。

 仙台市は7月の配送量が希望量を下回るため、個別、集団接種の予約受け付けを6日からストップした。このため、大規模接種会場への申し込みが殺到し、予約が取りにくい状態だ。

 休日返上で個別接種を担う仙台市の医師は「一方的に完了時期を決められ、せかされてきた。今度は予約を受け付けられなくなった。振り回されっぱなしだ」と憤る。

 64歳以下の接種開始は、都道府県庁のある全国47市区のうち44市区が6~7月で、先行する65歳以上と時期が重なる。政府は職場や大学による接種も奨励しており、供給不足に備えておくべきだった。

 政府は自治体や医療機関に未接種分の在庫があり、1日当たり120万回の接種ペースは維持できると強調する。一方、自治体側は2回目接種分が在庫とみなされ、政府が管理するワクチン接種記録システムに実態が反映されていないと反論している。

 自治体と連携を密にし、需給を調整すれば、認識の食い違いは生じなかったはずだ。

 菅政権はコロナ禍から脱する「決め手」と接種に前のめりだ。「ワクチンを打ちまくれ」の大号令の陰で、取り残されている人がいないかどうか。国と自治体には、1人暮らしの高齢者らへのきめの細かい目配りも求めたい。

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