代償の花火用台船、予算の見通し立たず 気仙沼・防潮堤施工ミス問題

県が誤って22センチ高く施工した魚町の防潮堤。岸壁のかさ上げなど全工事が今春完了した=8日

 東日本大震災で被災した気仙沼市魚町に、県が防潮堤を誤って22センチ高く施工した問題で、防潮堤を造り直さない代わりに村井嘉浩知事が検討するとした地域振興策が、表明から2年半が経過した今も形として見えない。住民側は海上からの打ち上げ花火に使う台船を要望しているが、県側が用意できる予算規模は不透明で、歩み寄りにはまだ時間を要しそうだ。
(気仙沼総局・鈴木悠太)

 台船は夏の風物詩「気仙沼みなとまつり」での利用を想定する。現在はその都度、県内外の業者から借りている。まつり以外にもイベントや海上作業に活用することで、市全体の利益にしたい考えだ。

 施工ミスが発覚したのは2018年4月。震災後の地盤隆起分を差し引かず施工したため、全体の約5割の防潮堤が22センチ高く造られた。県は当初、造り直す選択肢も示したが、実際に住民が造り直しを希望すると一転して拒絶、住民の反発を買った。村井知事は同年の県議会11月定例会で、内湾地区を含む市全体の振興策の検討を表明した。

 20年1月から県気仙沼地方振興事務所と内湾地区復興まちづくり協議会メンバーらでつくる「気仙沼地域まちづくり懇話会」が始まり、住民側は今年1月の会合で台船などの要望を伝えた。

 震災直後、地区では防潮堤を不要とした。しかし県に建設を促され、高さを数センチでも低くするための街づくりを2年以上、100回超の会合で検討してきた経緯がある。

 内湾地区復興まちづくり協議会の菅原昭彦会長(59)は「生活もままならぬ状態で積み上げてきた努力が崩され、今も不信感を拭えない人がいる。相応の代償が必要だ」と話す。

 求める台船は、今夏のまつりで使うのと同じ長さ38メートル、幅15メートルの大きさで、中古でも数千万円規模とみられる。県側の予算確保のハードルは低くない。

 県によると、適当な国の補助金メニューはすぐに見当たらず、単独予算となる可能性もある。原因となった防潮堤の管轄は水産林政部だが、地域振興となれば別。予算確保で庁内のせめぎ合いにもなりかねない。担当者の一人は「こちらのミスに起因する問題で言いにくいが、予算化には県民の理解が得られる公共性も必要になる」とこぼす。

 県気仙沼地方振興事務所は現在、台船の価格などについて業者に聞き取りを進め、要望に対する回答の中身を詰めている。同事務所の武者光明所長は「納得が得られるよう、なるべく早く丁寧に説明したい」と話す。

 菅原会長は「大事なのは問題を風化させず思いを寄せてもらうこと。協議を通じ信頼関係を結び直したい」としている。

[気仙沼市魚町の防潮堤]2019年6月に本体が完成。その後、陸閘(りっこう)や岸壁のかさ上げなどを整備し、今年4月下旬に一連の工事が全て終了した。長さ312メートル、海抜4・1メートルで、上部に1メートルのフラップゲートがある。このうち160メートルが、計画より22センチ高く施工された。

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