社説(7/16):西村氏「圧力発言」撤回/混乱収束 人心一新してこそ

 東京都に発令された4度目の緊急事態宣言で、酒類販売業者を巡る政府の迷走はとんだ茶番だ。

 機能不全に陥っている内閣が、コロナ対応の司令塔が暴走するのを横目で見ながら止めようとしなかったのだ。

 政府は酒を提供する飲食店と取引しないよう酒類販売業者に出した要請を撤回した。西村康稔経済再生担当相が新型コロナウイルス対策を民間への圧力で進めようとする手法に、業界団体が猛反発したためだ。

 西村氏は先週、飲食店が酒類を提供しないよう取引先の金融機関に働き掛けを求めた発言を撤回したばかりだ。

 茶番の主役を続投させるのは妥当だろうか。答えは否である。菅義偉首相は西村氏を即刻更迭すべきだ。

 人の流れを抑制し、感染リスクを低減するためだとして、飲食業界は休業、時短営業を要請され、おおむね応じてきた。しかし、今回見せつけられた混乱に怒りが噴出している。信頼関係が損なわれたままでは、業界側の協力を得るのは難しい。

 東京五輪・パラリンピックは、開催都市が「緊急事態」の下、来週開幕する。

 東京は1日当たりの新規感染者数が1000人を超え、「第4波」のピークを突破した。感染抑止に向け、一段と難しいかじ取りを強いられる局面を迎えている。対策を円滑に進めるためには、何が重要なのかを最優先で考えるべきだ。

 菅首相は「西村氏は感染防止のために朝から夜まで頭がいっぱいで、いろんな対策を練ってきている」と述べたが、同情や情緒的な感慨は無用だ。

 飲食業界に対する締め付けの強さから見えてきたのは西村氏の現場感覚の希薄さだ。

 自民党内から「宣言の発出などで多忙を極めている分、特に飲食業を中心とする現場の声が聞こえなくなっているのでないか」と上がった声は、まさしく的を射ている。

 内閣の統制力欠如が甚だしい。酒類販売業者を巡る方針は、都に4度目の宣言発令を決める前日、首相と関係閣僚との会合で説明された。

 菅首相は記者団に「要請の具体的な内容について議論したことはない」と述べ、責任逃れのような姿勢を見せた。

 閣僚も無責任だ。麻生太郎財務相兼金融担当相は説明を受けた際、担当者に「放っておけ」と伝えただけだ。梶山弘志経済産業相は「強い違和感を覚えた」と語ったが、西村氏を制止しなかった。

 酒類販売業者は、規制官庁である国税庁や金融庁を通じて要請されれば、事実上の強制と受け止めよう。その場で閣僚が異論を唱えなければ、了承したことになるのは分かりきったことだ。

 コロナ対策の手詰まり感と焦燥感が強まっているからこそ、司令塔には冷静さが求められる。人心一新が必要だ。

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