秋保に吹く風のよう 透明感のあるワイン 宮城のワイナリー探訪(6完)

「仙台の奥座敷」に立つワイナリー

 仙台市内から車で30分、秋保温泉郷に秋保ワイナリー(太白区)はあります。名取川に沿った谷あいの土地は東西に風が通り、秋保石(凝灰岩)が露出する水はけのよい土地。どんなワインが熟成しているのでしょうか。
(編集局コンテンツセンター・佐藤琢磨)

自然豊かな「仙台の奥座敷」秋保温泉郷に立つ秋保ワイナリー=仙台市太白区秋保

 「常に風が吹くので湿気が飛び、病気を防ぐ。寒暖差もある。秋保はブドウ造りに理想的な場所」。代表の毛利親房さん(53)は話します。

 秋保ワイナリーは2015年、宮城県のワイン産業の復活を目指して開設されました。当時は県内唯一の醸造所でした。

 開業前のファットリア・アル・フィオーレ(川崎町)が醸造を委託したり、了美ヴィンヤード&ワイナリー(大和町)のスタッフが研修に訪れたりしています。南三陸ワイナリー(南三陸町)の社長は開業前、秋保ワイナリーで修行しました。まさに宮城のワイナリーのけん引役です。

 理想とするのは見た目も味わいも「クリーン」なワイン。醸造担当者によると、うま味成分を残しながら、濁りを除いてワインの透明度を高めるのは難しいそうです。

川に沿って吹く風のようにさわやかなワイン「リバーウインズ2020」の赤(左)と白

 7月現在は赤や白、ロゼなど6種類と県内の契約農家から仕入れたリンゴを使ったシードルが並びます。毛利さんは「リバーウインズ2020」の白と赤(750ミリリットル、2200円)を勧めてくれました。

 白の配合は山形県産デラウェアが97%、ネオマスカットが3%。さっぱりとした辛口の仕上がりで、口に含むとネオマスカットが華やかに香ります。

 山梨県産のマスカットベリーAを100%使用した赤は、渋み成分のタンニンが少なく軽快な口当たり。品種の特性でもあるイチゴの香りは控えめで、プルーンやハーブの味わいが特徴です。

 どちらも主張は穏やかですが、それが個性でもあります。「白も赤も和食に寄り添うワイン。食事とのペアリング(相性の良い組み合わせ)を大切にしています」と毛利さん。白はバターたっぷりのムニエルや貝の酒蒸し、海藻サラダ。赤は肉じゃが、タレをからめた焼き鳥などしょうゆ味が合うと教えてくれました。

ワイナリーを囲むブドウ畑=仙台市太白区秋保

 16年からはワイナリーを囲む自社の畑で栽培したブドウで醸造しています。収穫量は徐々に増え、20年は2トン超が採れました。自社のブドウだけで醸造した「秋保産ワイン」は早ければ年内にも販売予定です。

 出荷を待つのは「メルロー」で造った赤と、「ピノ・グリ」「ゲヴュルツトラミネール」をブレンドした白の計2000本分。「宮城のワイン、ちょっといいんじゃないのと思ってくれるはず」。毛利さんは自信をのぞかせます。

 東北の食と酒を産地で味わう「テロワージュ東北」を毛利さんは提唱。生産者や行政、観光、飲食事業者らと連携し、収穫体験やワイナリー巡りを組み合わせて東北の魅力を世界に発信しています。

 宮城のワイナリー6軒をたどる旅。共通するのは東日本大震災後の地域を盛り上げたいという情熱でした。それぞれの土地や気候、文化とともに生産者の思いも溶け込んだ「宮城ワイン」。店で、自宅で、飲んで応援しませんか。

ショップではワインに合う宮城県産の食品の販売やグラスワインが楽しめる
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