「検証・郡市政 あの問題は今」(下)南北線延伸 財政難で隣接市の構想静観

開業から34年を迎え、延伸構想に注目が集まる市地下鉄南北線=仙台市泉区

費用、400億円超と試算

 仙台市地下鉄南北線は15日、1987年の開業から34年を迎えた。泉中央(泉区)-富沢(太白区)間の14・8キロを結ぶ大動脈は近年、ルート延伸に注目が集まる。隣接市のトップがそれぞれ選挙公約に掲げ、実現の糸口を模索している。

 富谷市は若生裕俊市長が2015年2月、市域と泉中央駅の交通アクセス改善を訴えて当選した。20年3月に策定した「都市・地域総合交通戦略」には、将来的な公共交通の強化策として、地下鉄の整備検討を盛り込んだ。

 21年度は、400億円以上と試算する延伸費用を抑えるため民間資金活用による社会資本整備(PFI)方式などの可否を調べる。市交通政策推進室の葛西圭二室長は「採算性はもちろん、仙台市民のメリットも示さなくては協力が得られない」と課題を説明する。

 市は、泉区に接する明石台地区を今後の公共交通の拠点と位置付ける。朝のラッシュ時、国道4号など周辺道路が混雑し、泉中央行き路線バスはたびたび渋滞に巻き込まれるためだ。

 明石台第二町内会の平岡政子会長(64)は「通勤、通学、買い物で泉中央駅を利用する住民が多い地区。鉄道などで定時性を確保する環境を行政の垣根を越えてつくってほしい」と求める。

 南北線の南端、富沢駅から南進するルートを描くのは名取市。16年7月の市長選で山田司郎市長が延伸を公約に盛り込んだ。19年度の当初予算案に、約600万円の導入可能性調査費を計上し、本格的な検討に入るという手はずだった。

 だが、市議会から「実現する見通しはあるのか」と疑問視され、調査費は撤回に追い込まれた。市の長期総合計画(20~30年度)に「延伸」を明記することもできず、議論は止まった。

 小平英俊企画部長は「将来のまちづくりに関わる重要な事業だが、ハードルは高い。現状で(議論の)再開は難しい」と明かす。

27年ピークに人口減へ

 仙台市は富谷、名取両市の延伸を巡る動きを静観する。「まずは各市で考えている段階。協議のテーブルに着く状況にない」(交通政策課)とにべもない。

 消極的な理由は財政事情が大きい。地下鉄事業の累積赤字は15年12月開業の東西線を合わせ、19年度決算で867億円に上る。郡和子市長(64)は定例記者会見などで「新たな地下鉄建設となると、厳しいものがある」と理解を求める。

 市の将来予測によると、早ければ27年をピークに市人口は減少に転じる。今後の機能集約型のまちづくりを踏まえ、拡大型の延伸には慎重な声が少なくない。

 八木裕一都市整備局長は市議会6月定例会の答弁で「新たな市街地の形成が見込めない中、地下鉄を延伸する計画はない。延伸する場合は(前提条件として)居住人口の増加、都市機能の集約が相当程度、必要になる」との見解を示した。

 1970年代に構想が浮上し、90年代に一時検討された南北線の延伸。数十年の時がたった今、隣接市で再燃し始めた議論が仙台に飛び火する気配はない。
(報道部・布施谷吉一)

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