<手腕点検>亘理町・山田周伸町長 民間の力を積極活用

荒浜地区プロジェクトの結団式で記念撮影する山田町長(右端)=1日

 東日本大震災から10年がたった今年、地方自治の現場は新型コロナウイルス感染症との闘いに引き続き追われた。少子高齢化や人口減少、地域経済の疲弊も深刻化。難局のかじ取りを担う市町村長は地域の負託に応えているか。住民や関係者の声を交えて検証する。

 東日本大震災で被災した宮城県亘理町荒浜地区の新たなまちづくりを民間事業者が推進するプロジェクトが今夏、始動する。音楽やサーフィンなどで夢実現に挑む若者30人が、地域おこし協力隊員として中核を担う構想だ。

 1日にあったプロジェクトの結団式。山田周伸(ひろのぶ)町長(57)は「復興のハード事業が完了したキャンバスに彩りを添えてほしい」とエールを送った。

 町は民間との連携・協働事業を矢継ぎ早に進める。事業者が町有施設や町有地の活用策を事業化する「民間提案制度」を3月、県内で初めて導入。施設命名権(ネーミングライツ)や企業版ふるさと納税の活用も始めた。

 三戸部貞雄副町長(72)は「民間出身のトップらしく、新しい視点で民間を呼び込もうとしている」と説明する。

 一方で荒浜地区のプロジェクトには地元から戸惑いや懸念も。ある住民は「復興途上にある地域の未来を民間に白紙委任していいのか。行政は急ぎすぎている」といぶかる。

 地区の60ヘクタールを舞台にした大規模事業の成否は山田町政の試金石になる。町長は「元気な荒浜を発信するのが支援への恩返し。変化を恐れず、一歩進んでほしい」と理解を求める。

 2018年5月に初当選した山田町長は19世紀後半からみそを造っていた旧家の出身で、祖父も町長を務めた。穏やかな人柄で町長室からしばしば各課に足を運び、課題や疑問点を確かめる。フットワークを評価する半面、「首長の重みをもっと出してほしい」との懸念も庁内にはある。

 政策面では行財政改革に取り組み、20年度末に復興事業を完遂。懸案だったJR常磐線亘理駅の東口開設も決まった。新生児への給付金創設など子育て世代への支援も重視する。

 官民連携の推進を除けば、慎重な町政運営で失点は少ないとの見方が一般的。佐藤実議長(77)は「無難にこなしているが、もっと独自色を出していい」と語り、高野進町議(77)は「各課題への深掘りが足りない。新事業は市場調査を踏まえた上で展開するべきだ」と注文を付ける。

 1期目の大半は新型コロナウイルス対応に追われた。催しや各種団体との会合がほぼなくなり、町長の顔や人柄を知らない住民が少なくないとの指摘がある。

 山田町長は「1年目は無我夢中で行政を勉強し、これから町民の話を聞こうという段階でコロナが来た」と悔しさをにじませる。住民の声をくみ取り、どう施策に反映させていくかが課題と自覚する。
(亘理支局・庄子晃市)

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