福島再生「新たな担い手」に自治体熱視線 移住促進事業が本格始動

ふくしま12市町村移住支援センターの開所式に臨む平沢勝栄復興相(左から2人目)と内堀知事(同3人目)ら=9日、富岡町

 福島県と復興庁は今月、東京電力福島第1原発事故に伴う避難を経験した12市町村への移住促進事業を本格始動させた。首都圏での新型コロナウイルス感染拡大で地方移住に関心が高まる中、帰還率に伸び悩む自治体は新たな「復興の担い手」に熱い視線を送る。一方、地元からは施策の進め方に疑問の声も出ており、十分な成果を生み出せるかどうかは未知数だ。(福島総局・斉藤隼人)

人口減に危機感、「ばらまき」との声も

 「住民帰還を柱にしつつ、地域に新たな活力を呼び込むことが重要だ。移住施策のさらなる深化を図る」。内堀雅雄知事は9日、富岡町であった「ふくしま12市町村移住支援センター」開所式で強調した。
 センターは都市圏を中心とする「復興関心層」に12市町村内の仕事や移住者向け制度を紹介し、受け入れる地元との橋渡し役を担う。9日は国や県、各自治体の幹部らによる実行会議も設立され、移住促進の動きが一気に熱を帯びた。
 12市町村への新規移住・二地域居住者は毎年増え続け、2020年度は過去最多の155世帯に上った。センターが関東圏などの5万人に実施した意識調査では、復興に強い関心を持つ層の37%が「福島に住んでみたい」と回答した。
 移住施策強化の背景には自治体存続への焦燥感がある。県によると、国の避難指示が解除された地域の居住者は新規移住を加えても1万4733人と住民登録数の32・7%にとどまる。避難指示が長引いた区域ほど帰還は低調で、9日の会合では「移住促進は持続可能なまちづくりを進める上で不可欠」(浪江町)などとの声が相次いだ。
 移住促進策の目玉の一つとして県は1日、県外から12市町村に移住した場合に1世帯当たり最大200万円(起業者は別途最大400万円)の支援金給付を始めた。全額国費で、避難地域に特化した移住支援金は初の試みとなる。
 各地の類似支援と比べて金額を高めに設定し、給付要件は「5年以上住んで就業か起業すること」など。国は本年度、300人の移住を目標に掲げているが、施策への異論もある。
 「移住者は増えてほしいが、安易なばらまきには反対だ」と批判するのは、飯舘村のNPO法人「ふくしま再生の会」の田尾陽一理事長(80)。自身も18年に東京から移住した。
 現在は若手移住者らと地域交流の拠点づくりに汗を流す。田尾理事長は「(金銭目当てに)復興への志なく移住する人も出かねない。地域の再生に励む若者らを支える施策の方が必要で、魅力を高めれば移住者は自然に増えるはずだ」との見方を示す。
 東大大学院情報学環の開沼博准教授(社会学)は「復興予算の終わりが見え始め、各自治体には人口減への極めて強い危機感がある」と話し、「金銭はあくまで呼び水でしかなく、ずっと住んでくれる保証もない。全国で移住促進の競争が起きている中、この地域にどう付加価値を見いだせるかが重要」と指摘する。

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