デスク日誌(7/23):世代を超えて

 母と子ども3人のモノクロの表紙が、当たり前の日常が確かに存在していたことを雄弁に物語る。1945年8月6日。米軍が投下した原子爆弾が全てを奪い去るまでは…。

 広島市の中国新聞社が刊行した本が先日、届いた。2020年度新聞協会賞を受賞した連載「ヒロシマの空白 被爆75年」を再構成したものだ。

 広島原爆の犠牲者は「14万人±1万人」とされるが、いまだ把握できていない死者が大勢いる。取材班はそれを「ヒロシマの空白」と呼び、「名もなき死者」の特定作業を進めてきた。

 中国新聞社ヒロシマ平和メディアセンター長の金崎由美さんは、取材班の仕事ぶりを「素手で地面を掘り起こすような地道な作業」に例える。

 76年前の原爆の惨禍を今も広島で報じ続けているのは、戦争の「せ」の字すら知らない世代の記者たちだ。もちろん、デスク陣も全員戦後生まれだ。

 翻って東北。東日本大震災10年報道を終え、ヘトヘトになっているわが身を振り返りつつ思う。世代を超え、大事なテーマに息長く向き合い続けてきた中国新聞に見習うべき点は多い。
(報道部担当部長 山崎敦)

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