(21)滴りのこの世に出でし光かな/世古 諏訪(1928年~)

 「滴り」が夏の季題。山の岩壁や苔(こけ)から滴る水の涼感は何とも言えない。間違っても水道の水滴のことではない。岩と岩の隙間から新たな命として膨らんでゆく滴りの様子をふっくらと写生している。岩肌の滴りというのみならず、この世に出でし全ての者への応援歌のようだ。昨日開幕した東京五輪の選手の躍動を重ねてもいい。作者は昭和3年、三重県生まれ。細倉鉱山に勤務し、方言研究『細倉の言葉』(1956年)がある。掲句は句集『醉芙蓉』より。(浅川芳直)

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秀句の泉

 「秀句の泉」は、俳句の魅力を伝えます。執筆は俳人の永瀬十悟さん(福島県須賀川市)、浅川芳直さん(宮城県名取市)、及川真梨子さん(岩手県奥州市)の3人。古典的な名句から現代俳句まで幅広く取り上げ、句の鑑賞や季語について解説します。


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