「絶対王者」桃田散る 覚悟の舞台実らず

男子シングルス1次リーグで韓国の許グァン熙に敗れた桃田=武蔵野の森総合スポーツプラザ

 どこまでも五輪には縁がないのか。東京五輪バドミントン男子シングルスで金メダル最有力だった桃田賢斗(26)=NTT東日本、福島・富岡高出=が28日、1次リーグ2戦目で世界38位の韓国選手にストレート負けし、1勝1敗となって敗退した。

 最後に代名詞のヘアピンがネットにかかって敗戦が決まると、がっくり膝をついた。「自信を持ってプレーできなかった。悔いがないかと言われれば、そうではない」。ぼうぜんとしたまなざし。必死に現実を受け止めようとしていた。

 五輪に背を向け、五輪に見放されてきた。自らの過ち、不運な事故。この5年は、誰よりも後悔と苦難に満ちた日々だった。

 2016年リオデジャネイロ五輪直前、自身の違法賭博が発覚。試合出場停止処分を受け、メダルが期待された大会を棒に振った。

 身を隠すように香川の実家に引きこもった。周囲の目を気にしながらの生活。1年2カ月ぶりだった処分明けの復帰戦は涙を流した。「本当に変わろうという気持ちを持つ」と誓った。

 1度失った信頼を回復させるのは簡単ではない。以前は素通りすることもあったファンの前で、あいさつするようになった。学校訪問の機会を増やした。5年間、報道陣に何を聞かれても、二言目には「感謝」の言葉を繰り返した。

 しかし、それらは改心の証しにはならない。勝負の世界は結果で示すほかない。

 復帰後は圧倒的な強さを見せた。1年余りで日本男子初の世界ランキング1位に立つと、19年は国際大会年間11勝の最多記録を打ち立てた。バドミントンができる喜びを思い出し、ストイックに練習に取り組んできたのは間違いない。

 20年1月、遠征先で交通事故に巻き込まれ、右目眼窩(がんか)底を骨折した。引退がよぎりながらも、手術しリハビリに励んだ。

 不屈の精神でコートに戻ってからは、かたくなに口にしてこなかった金メダル獲得を宣言する。

 「5年前は言えなかったが、今は覚悟を決めてはっきり言える。自分と向き合い、頑張ってきた証拠だと思う」

 舞台は整っていた。あとは絶対王者の力を発揮するだけだった。

 五輪の神様はほほ笑んでくれなかった。「誰からも応援される選手になりたい」。切実な思いを形にするはずの舞台は、何も示せないまま早々に幕が下りた。
(佐藤夏樹)

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