不登校の子の居場所に 宮城県が「学び支援教室」導入

 宮城県は本年度、不登校の子どもを専用の教室で受け入れる「学び支援教室」を本格導入した。教室に行きづらさを覚える児童生徒に、より専門的な教員を配置し、学びの環境を整える。
(生活文化部・浅井哲朗)

一緒にゲーム 緊張ほぐして人間関係づくり

 昨年度開設された多賀城市城南小の「ほっとルーム」。2~6年の5人が通う。登校時間はまちまちだ。

 高学年の児童3人が、それぞれ課題とする教科のプリント学習に取り組む。一段落すると、声が上がった。

 「先生、(カードゲームの)『大富豪』やりたい」。担任の豊田幸二教諭(51)が「よし、トランプ準備して」と答える。テーブルを囲み「これならどうだ」「そう来るか~」。やっつけられた豊田教諭の横で、男児が得意顔を浮かべた。

 特別支援教育の経験が長い豊田教諭は本年度、城南小に赴任した。「きっかけはさまざまだが、教室に行けない子どもたちは自信とエネルギーを失っている。『できる』という実感の積み重ねが必要」と強調する。頻繁にゲームを取り入れるのは、抑うつ傾向が強い子どもたちの緊張をほぐし、対人関係の築き方をトレーニングするのが狙いだ。

 勉強は自習が中心だが、給食の準備や後片付け、掃除など、学校での過ごし方は他の子どもたちと変わらない。担任に加え、子どもたちの相談相手として常駐する支援員、定期的に訪れる学外のスクールカウンセラー(SC)が手厚く支える。

児童とカードゲームを楽しむ豊田教諭(中)と女性支援員。何げないやりとりを通じ、人間関係づくりを経験させる=多賀城市城南小

 子どもたちが元のクラスへ復帰するのが理想だが、「今はまだ、学校生活を送るための心身のバランスが崩れた状態」と豊田教諭。児童の心理に最大限の注意を払う。

 クラスでのいじめをきっかけに1年以上、保健室登校を続けていた5年女児は今春、ほっとルームを訪れた。「温かい雰囲気で、ここなら行けるかも」と思ったという。

 初めは漢字練習のみで5分ほどしか居られなかった教室で、工作や塗り絵などにも没頭するようになった。運動会では元のクラスの一員として参加し、昼休みになると友人が遊びに誘いに来る。母親は「『休みたくない』と言うようになった。目標を持って頑張るようになった」と喜ぶ。

「刺激を避けるだけでは解決できない」

 学び支援教室はまだ一部の学校にしかない。SCなど学外の人的資源の活用についても「学校による差が大きい」(関係者)のが実情だ。

 スクールカウンセリングに詳しい田上不二夫・筑波大名誉教授は「不登校の子を刺激しないようにするだけでは、問題は解決できない。『学校は(行っても)大丈夫な場所』だと子どもが思えるよう、地域と連携して多様な児童、生徒を受け入れる環境づくりを進めるべきだ」と指摘する。

[学び支援教室]宮城県教委が2020年度にモデル校4校に導入し、21年度に小学校7、中学校18の計25校で本格実施。現在約170人が通う。専任教員を配置し、支援員などと連携して学習と自立を支援する。宮城県内の不登校児童生徒は19年度4000人を超え、1000人当たりの人数は4年連続で全国ワーストを記録した。

多賀城市の小中学校の不登校担当者数名が集まった事例検討会。学校の枠を超え、個別ケースの対応に知恵を絞る(内容は非公開)=多賀城市役所

「医教連携」で実例検討 発達障害、早期発見が重要

 一般に、自閉症スペクトラム障害や学習障害などの発達障害を抱える子どもは、周囲から孤立し不登校につながりやすいとされる。

 公立黒川病院(宮城県大和町)小児科の岩城利充医師は県内4地域の教育委員会と連携し、不登校など問題行動の実例検討会を開催。早めの受診につなげる「医教連携」の取り組みを続ける。

 岩城医師は発達障害について「気になる症状は様子見をせず、小学1年の夏休み前までに正しい診断を受けてほしい」と強調する。

 不適切な養育など親子関係にも着目し、「実は愛着の問題という場合もある。大事にされているという安心感が子どもに必要なだけでなく、親自身へのケアも必要だ」と話す。

 学校生活に適応するには、基本的な生活習慣を身に付けることが欠かせない。福島県立医大の横山浩之教授(小児神経学)は、ゲームやインターネットなどのメディア依存が不登校を招く害悪になっていると指摘する。

 「メディア依存による昼夜逆転の生活が『怠学』から不登校へとつながる。自分をコントロールすることを覚えなければいけない思春期では、対応が難しくなる」と警鐘を鳴らす。

 就学前から「早寝、早起き、朝ご飯」「返事とあいさつ、靴をそろえて脱ぐ」などの習慣づけをするには、家族の下支えが大切。横山教授は「家の手伝いを進んで行うことで、他人のために役立つ『自己有能感』を育める。手順を筋道立てて考えることで、学力向上にもつながる」と助言する。

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