社説(8/15):終戦から76年/教訓学び 次代につなげたい

 新型コロナウイルスワクチンの接種が本格化する前の5月、全国紙に掲載された広告が耳目を集めた。戦時中の訓練を思わせる少女たちの写真の中央に大きなウイルスの画像が重ねられ、「ワクチンもない。クスリもない。タケヤリで戦えというのか。このままじゃ、政治に殺される」。出版社の宝島社が企画した。

 緊急事態宣言を繰り返しても、感染は収束するどころか拡大の一途をたどる。そうした事態を招いた政府のコロナ対策を、冒頭の新聞広告のように太平洋戦争時に例えて批判することが目立った。見通しの甘さや後手に回る対応、根拠なき楽観主義などが当時の指導者たちと似ているとされ、「コロナ敗戦」の言葉も使われた。

 だが、戦争や軍事の比喩からは何も生まれない。先月22日の本紙文化面でノンフィクション作家の保阪正康さんが指摘しているように、「今と似ている」というのは現実を考える「入り口」でしかなく、「出口」ではない。入り口で思考停止に陥ることは、あの戦争から教訓を学んでいないことに等しい。

 それは指導者だけではない。一時横行した「自粛警察」や同調圧力の高まりに似た風潮は、先の戦時中でも見られたことだ。

 76年前のきょう、日本は終戦を迎えた。コロナ禍で、全国戦没者追悼式は昨年に続いて規模を大幅に縮小して開催される。

 世界に目を転じれば、各地で紛争が後を立たない。米中対立は緊張から危機へと向かいつつある。中国は東・南シナ海で覇権的な動きを強めている。台湾を巡っては、麻生太郎副総理兼財務相が先月、「大きな問題が起きれば、存立危機事態に関係すると言ってもおかしくない。日米で台湾を防衛しなければならない」と発言。防衛力の強化を訴えた。私たちが享受する平和は極めて微妙なバランスの上にある。

 日本世論調査会の「平和」に関する世論調査によると、「日本が今後、戦争をする可能性がある」は「大いに」と「ある程度」を合わせて計41%で、昨年から9ポイント上昇した。米中対立への危機感を反映したものとみられる。

 一方で、自衛隊の在り方に関しては「憲法の平和主義の原則を踏まえ、『専守防衛』を厳守」が74%だったのに対し、「9条を改正して『軍』として明記」は21%にとどまった。力に対抗するのは力だけではない。回答の中に、日本が歩むべき針路が隠されているのではないか。

 私たちはあの戦争から何を教訓として得たのか。そして、それを生かしているのだろうか。過去から謙虚に学び、平和を希求する不断の努力を重ね、次代につなげていく責務を果たさなければならない。戦没者への祈りとともに、改めて、そのことを心に刻みたい。

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