社説(8/17):不妊治療休暇/取得しやすい環境整備を

 不妊治療を受けやすくなるという点では一歩前進と言えるだろう。国家公務員が最大で年間10日の有給休暇を取れる制度が来年1月に創設される。「官」が率先して取り組むことで、企業や地方自治体でも制度導入の動きが加速することを期待したい。

 不妊治療を受ける人にとって、仕事との両立は切実な問題だ。人事院が実施したインターネット調査では、治療を経験したり検討したりしている人のうち、仕事との両立を「かなり難しい」と考える人は62・5%に上り、「両立は無理」は11・3%だった。

 治療によっては、いつ受診が必要になるか予測がつかないため、仕事を遅刻したり早退したりすることがあり、治療のために退職した人は多い。地方の場合、国の治療費助成制度で治療を受けられる指定医療機関が限られ、通院に時間がかかる場合もある。

 休暇制度を導入する企業は増えつつあるものの、十分とはいえない。厚生労働省がこのほど公表した治療経験者へのアンケートによると、6割以上が「勤務先で不妊治療の支援はない」と答えた。

 国は本年度、不妊治療に使える休暇制度を導入した中小企業に助成金の支給を始めた。企業はそうした制度も活用し、環境整備に力を入れてほしい。時間や場所など柔軟な勤務を可能にしたり、有給休暇を時間単位で取得できたりするなど、幅広い選択ができるのが望ましい。

 インターネット調査では、「かなり難しい」「無理」と答えた人が挙げた理由の一つに経済的負担があった。

 菅義偉政権は少子化対策の柱に不妊治療の経済的な負担軽減を据え、1月に特定不妊治療費助成制度を拡充した。2回目以降は1回15万円だった助成額が倍増されたほか、回数も通算6回から1子ごとに6回までとなった。夫婦の合計所得730万円未満の制限も撤廃された。

 来年度は公的保険適用を拡大する予定だ。体外受精や顕微授精、男性不妊といった国の助成対象に加え、人工授精も適用される見込み。体外受精などは1回で数十万円もかかるため、保険適用の恩恵は小さくない。ただ、妻の年齢や回数に関しては、現行の助成制度と同じ上限とする案が有力視されている。

 制度が整いつつある中で欠かせないのは、職場の理解と意識改革だ。厚労省の2017年度の調査では、不妊治療のことを職場に伝えている人は4割弱にとどまり、伝えない理由は「知られたくない」が多かった。プライバシーに配慮しつつ、相談しやすい態勢づくりにも力を入れるべきだろう。

 東北では、NPO法人フォレシア(秋田市)のように治療を受ける人や企業など当事者の相談に乗る団体もある。安心して不妊治療を受けられる環境整備を官民協働で進めることも重要になる。

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