社説(8/18):「緊急事態」またも延長/命を守り抜く覚悟が見えぬ

 「国民の4割が1回接種したら、感染者の減少傾向が明確になる」。新型コロナウイルスのワクチン接種を巡り、菅義偉首相がこう明言したのはわずか1カ月余り前だ。

 しかし、感染力が強いデルタ株のまん延を抑え込むことができず、ワクチンを頼みの綱に「第5波」を収束させるシナリオは崩壊した。

 政府は東京、大阪など6都府県に発令中の緊急事態宣言の期限を今月31日から9月12日まで延長し、7府県を20日から追加することを決めた。

 東京は7月12日から4度目の緊急事態が継続されているが、宣言が効果を上げていないことは明白だ。今回の延長幅で抑え込めるとは到底思えない。

 政府の甘い見通しが失望を生み、菅首相の言葉は訴え掛ける力に乏しく、心に響かない。命を守り抜く覚悟が見えないのだ。不信が先立つ状態では、緊急事態の切迫感は社会で共有されまい。

 各地で逼迫(ひっぱく)する医療体制をどう早期に拡充するのか。自宅療養者の安心をどう確保するのか。ワクチン供給の目詰まり状態はいつ解消され、接種がスムーズに進むのか-。

 目前にある喫緊の課題に具体的に、丁寧に応えてこそ、政府が求める移動の制約や営業制限に国民が応じ、対策が実効性を持つのではないか。

 第5波は全国に広がり、各地で新規感染者数が過去最多を更新している。宮城など10県には9月12日まで、まん延防止等重点措置が適用されることも決まった。これにより宣言と重点措置の対象は計29都道府県に拡大する。コロナ禍に見舞われて以来、最大の感染爆発に直面している。

 政府はワクチン接種が進み、感染防止効果が上がると見込む中、飲食店を感染の「急所」と見なし、厳しい措置を続けた。しかし、飲食業界に重点を置いた対策は反発を招いた上に、決め手にはなっていない。感染リスクを抑えるためには、人の流れを昼夜、大胆に絞り、接触機会を減らすことに尽きる。

 菅首相は先週、「10月初旬までに、希望者の8割が2回ワクチンを接種できる体制を作っている」と表明した。

 一方、デルタ株が主流となって以降、専門家からは「制御不能だ」「いつ感染が下火になるか全く分からない」と悲痛な声が相次ぎ、感染不安が一段と高まった。

 10月初旬からそう遠くない時期に社会が集団免疫を得て、新規感染者数は下落傾向をたどり、重症化リスクが大幅に軽減されるのか。デルタ株の猛威といったイレギュラーな要因が見通しを立てにくくしているにしても、コロナ禍の出口が一向に見えない状況はあまりにも息苦しい。

 政府は専門家とともに、ワクチン接種による集団免疫獲得について統一見解をまとめ、疲弊する社会がコロナ後に意欲をつなげられるメッセージも発するべきだ。

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