社説(8/19):タリバンが首都制圧/「テロの温床」復活許すな

 20年にわたった「テロとの戦い」が振り出しに戻ってしまった。バイデン米大統領の見通しの甘さが非難されるのは当然だとしても、米国の威信の低下をそのまま世界的な民主主義の退潮に直結させてはなるまい。

 日本をはじめ国際社会は連携して避難者への人道支援を急ぐとともに、女性や子どもの人権を踏みにじる圧政の復活は決して認めないという姿勢を強く示す必要がある。

 アフガニスタンでイスラム主義組織タリバンが首都カブールを制圧し、全土を掌握した。徹底抗戦の構えを見せていたガニ大統領は国外に逃れて政権は崩壊。タリバンの復権により、過激なイスラム原理主義に基づく「恐怖政治」の再来が懸念される事態となった。

 きっかけとなったのは、バイデン米政権がタリバンの勢力拡大を看過し、駐留米軍を8月末までに撤退させる方針を曲げなかったことだ。国内で厭戦(えんせん)ムードが高まる中、米国が自ら始めた戦争に背を向けた格好だ。

 米国は2001年の米中枢同時テロを受け、同盟国とともに「テロとの戦い」を開始した。国際テロ組織アルカイダの指導者ウサマ・ビンラディン容疑者をかくまったとして、旧タリバン政権を攻撃し崩壊させ、その後も多国籍部隊を率いて駐留を続けた。

 この約20年間で、米国がつぎ込んだ戦費は1兆ドル(約110兆円)に上り、命を落とした米兵は2000人以上、負傷者も2万人を超えた。

 トランプ前政権は昨年、タリバンと和平合意を結び、バイデン政権もこれを引き継いだ。撤退を急いだ背景には米中枢同時テロから20年の節目が迫っていたことや、外交安保政策の重心を「対中国」に移したい思惑があった。

 しかし、準備は十分とは言えず、タリバンが山岳地帯などでも行動しやすい夏に「力の空白」を生じさせた。6月下旬時点で「撤退完了から6カ月以内」と見込まれていたカブール制圧は、予想以上に早まってしまった。

 バイデン政権は中国やロシアなどの「権威主義」に対抗するため、民主主義陣営の先頭に立つ姿勢を強調している。だが、20年の犠牲を経てなお、民主主義を根付かせられぬままアフガンを見捨てることになれば、外交理念への信頼は揺らぎ、中ロの一層の台頭さえ許しかねない。

 大統領府を占拠したタリバンは、既に中国やロシアとの連携を探る姿勢を見せ始めている。女性の権利やスポーツの尊重を約束し、旧政権との違いものぞかせる。

 アフガンを再び国際テロの温床としないためにも、タリバンが本当にアフガン人を代表する新政府を発足させるかどうか、国際社会の厳格な監視が必要となる。世界秩序の安定に向け、形を変えながらも「テロとの戦い」を継続していく覚悟が求められる。

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