派閥衰退、議員の質低下 元厚相・元自民党津島派会長 津島雄二氏<小選挙区制25年>

[つしま・ゆうじ]東京都出身。東大卒。大蔵官僚を経て、1976年の衆院選で初当選。中選挙区の旧青森1区で7回、小選挙区の青森1区で4回の計11回連続当選。海部内閣と森内閣で厚相。2005年に自民党津島派会長に就任。09年に政界引退。都内在住。91歳。

 金権政治の打破を目的とし、政権交代可能な二大政党制を見据え、導入から25年が経過した小選挙区比例代表並立制が生み出したものは何だったのか。中選挙区時代から東北の地盤などで衆院選を戦った5氏に、小選挙区の功罪と現在の政治状況に対する受け止めなどを聞いた。

 -小選挙区制の導入から四半世紀になる。

 「課題が山積している。公認権を握る自民党執行部の力が強まり、派閥が弱まった。中選挙区時代は派閥の多様な主張が議論を活発化させたが、今しゃべるのは菅義偉首相だけ。昨年の総裁選ではほとんどの派閥が相乗りして菅さんを推したが、ああいう姿は想像できなかった。党が単色化している。異様な光景だ」

 「小泉純一郎首相がきっかけだろう。党総裁の公認権を利用し、郵政民営化に賛成しない議員に党内から対抗馬(刺客)を送り、異なる意見を抹殺した。結果的に上にへつらうようになり、ボトムアップの土壌がなくなった。偉い人を中心に何となく意見を統一し、『そうだ』と追従する状況が現在まで続いている」

 -派閥の衰退に伴い、議員の教育機能が低下した。

 「残念ながら事実で、真剣に考える必要がある。中選挙区時代は党内に二つも三つも異なる意見が出て、ダイナミックな政治の動きがいくつもあった。議員が勉強し、人脈をつくり、感性を磨く環境があった」

 「小選挙区制で政党トップの人気が当落を左右する力学が働き、『風頼み』の議員が増えた。議員の主体性がだんだんと消え、党が選挙区を守っているようだ。自公政権は据わりが良いが、みんなその上にあぐらをかいてしまっている」

 -特定の政策分野で力を発揮する「族議員」の影が薄くなった。

 「小泉政権から続く改革路線もあり、業界団体との付き合い方が変わったのではないか。官僚が(省益を)がっちり握っていると言わざるを得ないが、それでは総理中心の物の考え方に近い。非常に問題がある」

 -新型コロナウイルス対策や東京五輪など、菅政権への批判が高まっている。

 「政権が現在やっていることを続けていればいいと思っている議員は多くないだろうが、党内から異なる意見は出てこない。与野党とも支持率が低く、政治の現場に緊張感がない。全体的に人材不足の印象がある」

 -次期衆院選が迫る。

 「コロナ対応への批判もあるだろうが、現状はまだ与党が優位ではないか。野党も力不足で決め手に欠き、リーダーを担う器のある人材も見当たらない。国民に選択肢はなく、政権交代の機運は高まらない。東北では参院選で野党共闘が一定の結果を出したが、各党の政策や理念は違う」

 -2020年の国勢調査に基づき、次々回以降の衆院では宮城、福島、比例代表東北ブロックの定数が1ずつ減る可能性がある。

 「本当に数合わせだけの視点で決めていいのか。東京の議員をいくら増やしても、国は良くならない」

 「小選挙区比例代表並立制を今後どうするのかという視点が当然絡んでくる。小選挙区制は時流に左右されやすく、有権者に興味を持ってもらえるようなテーマを選んでしまう傾向に陥ってないか。制度改革に向けた議論の出発点になれば面白い。大きな動きにつなげる政治家が必要だ」
(聞き手は報道部・鈴木俊平)

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