河北抄(8/26):仙台市天文台(青葉区)の芝生の広場は太陽…

 仙台市天文台(青葉区)の芝生の広場は太陽系のミニチュアになっている。大型望遠鏡がある観測棟を太陽に見立て、75億分の1の縮尺で水星、金星、地球、火星、木星の印を配置。それぞれの公転軌道が地面に描かれている。

 こうした仕掛けは世界中で見られるらしい。デビュー作で芥川賞に決まった石沢麻依さん(仙台市出身)の『貝に続く場所にて』は、ドイツの学術都市ゲッティンゲンにある「惑星の小径(こみち)」を重要なモチーフとしている。こちらはもっと大きな20億分の1のスケール。

 受賞作は、10年が過ぎた東日本大震災を主題に書いた。「あの時間の向こうに消えた人々の記憶を、どのように抱えてゆけばよいのだろうか」。ドイツに暮らす留学生の主人公は答えを模索する。

 石沢さんは記者会見で「作品はある体験や記憶を巡る惑星のようなもの」と表現していた。内田百〓(ひゃっけん)ら数多くの作家が大災害と向き合い、自分なりの距離感で物語を紡いできた。それにならうように問いを投げ掛けたのだという。

 仙台ゆかりの新惑星が輝きだした。
(注)〓はもんがまえに月

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