民意反映に制度改革を 公明党副代表・元党幹事長 井上義久氏<小選挙区制25年>

[いのうえ・よしひさ]富山市出身。東北大卒。公明新聞記者を経て、1990年に衆院中選挙区の旧東京3区で初当選したが、93年に同選挙区で落選。小選挙区導入後の96年、衆院比例東北に単独立候補して返り咲いた。通算9回当選。2006年に党副代表就任。党幹事長、党東日本大震災復興加速化本部長などを歴任した。今期限りで引退する。74歳。

 金権政治の打破を目的とし、政権交代可能な二大政党制を見据え、導入から25年が経過した小選挙区比例代表並立制が生み出したものは何だったのか。中選挙区時代から東北の地盤などで衆院選を戦った5氏に、小選挙区の功罪と現在の政治状況に対する受け止めなどを聞いた。

 -小選挙区制導入時の議論に関わった。
政策が争点に
 「衆院の政治改革特別委員会で中選挙区制の見直し作業に加わった。小選挙区制により政権を選択する政策中心の選挙に変わり、自民党では派閥の力が低下した。無派閥の菅義偉首相の誕生が象徴的だ」

 -「政治とカネ」の問題解消が主眼だった。

 「小選挙区の導入に合わせて政治資金規正法や公選法を改正し、政治家個人への寄付に加え、政治家による寄付一切も禁止した。ご祝儀や香典といった文化を否定してまで選挙腐敗をなくそうとしたが、2019年の参院選広島選挙区の買収事件などの問題が相変わらず起きる。法改正の趣旨を理解しない新しい議員が増えた」

 -中選挙区の選挙も経験した。違いは。

 「中選挙区では個々の有権者とのつながりが重要で、コア(熱心)な支持者をつくる必要がある。日常的に有権者や地方議員と密に関わりつつ専門分野を磨き、『自分の足で立てる』政治家も育った。小選挙区では党の候補者が1人だけで、公認さえ得られれば自動的に党が全面支援してくれる。政治家が自分の足で立つ意識は薄れた」

 -小選挙区で政党は得票率以上の議席を得る。「死に票」が増える。

 「議院内閣制では民意を鏡のように反映する国会であるべきで、その実現には完全比例代表制や、日本型比例代表制とも言える中選挙区制が適切というのが持論だ。中選挙区制下では、完全比例代表制に近い議席配分になっていた」

 -中小政党が議席を獲得しづらい面もある。

 「多様な民意の反映には公明党など中小政党の議席獲得が非常に大事だが、小選挙区で勝つのは難しい。今の制度で民意を反映するには小選挙区289、比例176の現行の議席割合を議論すべきだ。比率を1対1にするのも一つの考え方だろう」

 -重複立候補の在り方や二大政党が実現しない現状をどう考える。
複雑な区割り
 「選挙区で1人を選んだはずなのに結果的に2人選ばれる比例復活は、有権者からすると分かりにくい仕組みだ。公明党は重複立候補を認めていない」

 「日本に二大政党が育つ素地があったかというと、必ずしもそうではない。例えば英国は労働者階級と保守層という二大政党をつくる二つの基盤があった。こうした歴史的・社会的基盤がない日本で、二大政党制を強引に実現しようとしても無理な話だ」

 -国勢調査に基づき、次々回以降の衆院選で東北の定数が減る可能性がある。

 「人口比を反映させる現行の定数配分の考え方を変更するのであれば、道州制など国の形やありようも含めた本格的な議論が求められる。むしろ小選挙区の区割り変更に伴い分割される市町村の増加が喫緊の課題だ。縁のなかった選挙区に突然組み込まれた住民らには、議員が地域の代表と感じられなくなっている。小選挙区制が行き着いた一つの限界のように思える」
(聞き手は報道部・大橋大介)

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